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あしたへ向かって

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早期開発で製造可能なワクチンは何なのか考えてみた-これまでの医薬の意義これからの医薬

中国の湖北省武漢を中心に感染が広がっている新型コロナウイルス(2019-nCoV)に対して、ワクチンを創製・開発する動きが忙しく本格化してきている。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)の支援のもと、複数の企業と大学がワクチンの創製・開発をスタートさせたなど他に、米GeoVax Labs社は中国企業とワクチンの共同開発をすると発表がなされた。グローバル大手の製薬企業と米国のワクチン企業などが開発に意欲、協力を示すなど、日々参入企業が増えている状況が現状だ。開発が始まったワクチンはmRNA(蛋白質に翻訳され得る塩基配列情報と構造を持ったRNA)ベースのものから、ペプチド(アミノ酸)ベースのもの、組み換え蛋白質ベースのものまで様々である。

また、予防効果については、臨床試験をしてみないと分からないものの、早期の開発が可能という点では、蛋白質ベースのワクチンよりも、化学合成が可能なmRNA(蛋白質に翻訳され得る塩基配列情報と構造を持ったRNA)ベースのワクチンや、大腸菌で製造できるプラスミドDNAベースのワクチン、ペプチドベースのワクチンなどが有利だと言えると考えられよう。

 

 感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)は、2019年1月23日、米Moderna社、米Inovio Pharmaceuticals社、オーストラリアQueensland大学のそれぞれと連携し、CEPIの拠出する資金で新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を進めると発表した。CEPIとは、ワクチンの開発を加速することにより、流行を脱線させることを目的とする官民連合である、さらに詳細を記すと、CEPIとは日本を含めた複数の国、米Bill & Melinda Gates財団、英The Wellcome Trustなどが拠出する官民連携パートナーシップである。通常時には需要が少ないが、世界規模の流行の兆しのある感染症に対するワクチン開発を促し、低中所得国にもアクセスできる価格でワクチン供給をするための取り組みを進めているので今一番頼りになるのではないだろうか。

今回、各企業・研究機関に資金を拠出し、新規コロナウイルスの創製、非臨床試験臨床試験をサポートすることになった資金は、各企業・研究機関当たり、数億円から十数億円にのぼるのではないかと推測する。

 

 CEPIとの連携に基づき、米Moderna社は、新型コロナウイルスに対するmRNAベースのワクチンの開発を進めるmRNAベースのワクチンとは、抗原となる蛋白質の遺伝子をコードしたmRNA(mRNA医薬)を投与し、体内で蛋白質として発現した抗原が免疫を惹起するというもの。Moderna社によれば、mRNAベースのワクチンの設計や、非臨床試験、米国での第1相臨床試験は、協力機関である米国立衛生研究所(NIH)傘下の米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が実施するという。

 

Inovio社は、同社のDNA医薬の基盤を用いて、新規コロナウイルスに対するDNAワクチン(開発番号:INO-4800)の開発を進める。同社のDNAワクチンは、抗原となる蛋白質の遺伝子をコードしたDNAを含むプラスミドDNA。「CELLECTRA」と呼ばれる独自のエレクトロポレーションデバイスを使って投与することで、DNAワクチンが強い細胞性免疫を誘導できるとしている。CEPIとの連携に基づき、同社はINO-4800の非臨床試験からフェーズI(第1相臨床試験)を実施する方針だ。


 Queensland大学は、同大学が開発し、オーストラリアUniQuest社が特許を保有している基盤技術「molecular clamp」を活用し、蛋白質ワクチンを創製するという。具体的には、新型コロナウイルスのゲノム配列情報から抗原となる複数の表面蛋白質を同定。それぞれの表面蛋白質の一部(ポリペプチド)を製造・精製した上で、それら複数のポリペプチドを合わせて形状を固定し、疑似ウイルスのようにして宿主の免疫機構に抗原として認識しやすくしたもの。蛋白質の製造に比べてペプチドの製造は容易なため、十数週間のうちに数十万回分のワクチンを製造できるとみられているが現状では誰も断言はできでいない。

 米GeoVax Labs社は2020年1月27日、中国BravoVax社と新型コロナウイルスに対するワクチンを共同開発すると発表した。まず、GeoVax Labs社が、基盤技術である「MVA-VLP」を活用してMVA-VLPワクチンを設計、構築する。具体的には、GeoVax Labs社が保有する、第5世代の改変ワクシニア・アンカラ(Modified Vaccinia Ankara:MVA)をベクター*1とし、新型コロナウイルスのウイルス様粒子(LVP)の形成に必要となる遺伝子を導入したものをMVA-VLPワクチンとする。

 MVA-VLPは、接種後体内で、新型コロナウイルスを模したVPLを形成・放出し、新型コロナウイルスに対する免疫を惹起する。MVAは、製造用のニワトリ細胞では複製され、大量に産生されるものの、哺乳類細胞では複製できないため、ヒトに投与しても安全だといわれている。有望なワクチンが創製されれば、BravoVax社がその後の開発、製造したのち、中国の公衆衛生当局や規制当局との協議などを担うことになるであろう。

 他にもある。米Novavax社がナノ粒子状ワクチンを開発する意向のようだ。同社のナノ粒子状ワクチンは、まず、新型コロナウイルスのゲノム配列から抗原となる蛋白質の遺伝子を選定する。それをバキュロウイルスに導入した上で、バキュロウイルスを昆虫細胞に感染させて組換え蛋白質を製造。複数の組み替え蛋白質をナノ粒子状に形成し、ワクチンとして投与するものだ。さらに、米Johnson & Johnso社の研究担当者が、米テレビ局のインタビューに答える形で開発に意欲を見せたなど、開発が活発化しているのも伺える。

 なお世界では、ワクチンだけでなく、新規コロナウイルスに対する発症予防、治療薬を開発する動きも増えている。現状、複数の企業と研究機関が、新規コロナウイルスに対する抗体医薬、新規コロナウイルスの分解を誘導するsiRNA薬の創製を始めている。他にも、既存の抗ウイルス薬を新規コロナウイルスの治療や発症予防に転用(ドラッグリポジショニング)できないか探る動きなども出てきていているため早いものでは数カ月以内にフェーズI(第I相試験)が開始されるものとみられているのが現状の動きである。

最後に代表的な核酸医薬であるアンチセンス,siRNA,アプタマー,CpGオリゴ核酸医薬開発と密接に関連する基盤技術として,DDS(体内動態),RNAデータベース,RNA検索技術をとり上げる.本企画により核酸医薬の包括的な理解が進み,関連する研究領域との有機的な相互作用が生まれることを期待している

このことは、これまで概念としては理解されていたが、まだまだ先の将来の「夢のくすり」と思われていた核酸医薬などが今は「次なる創薬様式の本命」として変貌を遂げていっている。このような現状の詳細を知ってこそ、さまざまな専門分野の視点から新しい切り口が生まれ、独創的な核酸医薬研究につながっていくのだ。例えば,前述した「新たな標的分子の発掘」については,siRNAを使った基礎研究の成果がそのまま創薬シーズにつながった前例もあり、病態の分子機構をよく知る研究者がオリゴ核酸を用いた素晴らしい治療戦略を思いついたりと、意外なところから新しい核酸医薬開発が生まれる可能性を秘めている。今回の新型コロナウイルス(2019-nCoV)での被害には大変心痛めている。ただ医療人としての視点から申すと、最近でなら基礎研究からオプジーボ(抗PD1抗体)というがん治療に革命的な薬が生まれた有名な例がある。オプジーボは基礎研究と大学院生の提案から生まれた。まさに基礎研究であるからと侮ってはならない例であろう。画期的な成果を生み出すには自由な基礎研究が不可欠だということだ。新型コロナウイルス(2019-nCoV)の創製・開発も医療の加速となって、これからの医療創薬の進歩発展に少しでもつながってほしい少しでも助けれる命が増えますように。これを私は願ってやまない。

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*1:遺伝子組換え技術