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COVID-19重症化の謎とマイクロバイオーム関与の可能性2

COVID-19重症化の謎とマイクロバイオーム関与の可能性2

 

6) BCGの効果?

 BCG接種国ではCOVID-19の発症率、死亡率が低いことが世界的に注目を集めている。日本では1951年からBCG接種が義務付けられているが、日本のCOVID-19の欧米諸国に比べて例外的とも言える少ない感染者数、死亡者数をこれと関連付けられるのかどうか、関心の持たれるところであろう。この説の妥当性については、専門家からも積極的な肯定論が続々と発表されている。

 その機序として、BCG接種を受けた人は自然免疫が訓練されており、ウイルスに対する抵抗性が高い可能性が言及されている。しかし一般にワクチンの免疫賦活効果は通常10年以内である。COVID-19とBCGとの関連があるとすると、数十年前にBCG接種を受けた人もその恩恵を受けていることになる。これはどう説明するのか?

 マイクロバイオームの考えを導入すると説明が可能となるかもしれない。ヒトのマイクロバイオームは3歳までに完成し、終生大きくは変わらない。乳児期に抗菌薬投与などでマイクロバイオームを変化させるとその影響は終生続き、それが成人になってから様々な疾患を起こすことは、マイクロバイオーム学が明らかにした大きな成果である。だからこそ、乳児期のかぜ、発熱などでの安易な抗菌薬投与は戒められるべきだとされるのである。乳児期にBCG接種を受けたことでマイクロバイオームが変容し、それが終生続くと仮定すれば、COVID-19の罹患の少なさ=BCG説は説明し得る。

 このように並べてくると、COVID-19をめぐる謎とされている様々な事象を統一的に説明できる視点が設定可能かもしれないと思うのは、免疫学を知らない臨床医のたわごとであろうか? 言うまでもなく、これらは全て情況証拠である。いや、証拠ですらないかもしれない。

 しかし、⼈体に起こる各種炎症の成り⽴ちに、マイクロバイオームが深く関わっていることが解明されてきた今、当然考えられるべき⼀つの切り込み⾓度だと思う。現状、この病気の重症化の機序についてほとんど解明されていない中、こういう発想を取ることで、COVID-19の不可解な病態が説明できるかもしれないと提案しているのである。初めに記したように、海外から同じ主張が出始めている。

証明方法

 マイクロバイオームが関与しているとして、それをどうやって証明するのか?

これには大きなハードルが横たわっているのがわかるであろう。

呼吸器が主たる病変の座なので、気道~肺の検体を調べることが望ましい。上気道の検体は比較的容易に採取できる。スワブを使えばよい。問題は下気道で、解析に必要な汚染のない検体を採取するには気管支鏡(特別な検体採取チューブを用いる)が必須だが、検査が侵襲的であり気軽に行えるものではない。繰り返しての検査となるともうほとんど不可能である。

 便で解析できる腸管のマイクロバイオームに比べて、呼吸器のマイクロバイオーム研究が遅れている最大の原因がここにある。肺のマイクロバイオームが調査困難であれば、次善の策として、便を用いた腸のマイクロバイオームを調べることも検討されてよいのではないだろうか?

治療に結び付く可能性

 思いつきだけでそれが証明不可能で、実際の治療に結び付かないのなら、こんなことは考えるだけ無駄であるといわれるかもしれない。しかし、その可能性はある。

 総説(Li N et al. Front. Immunol. 04 :2019)には、抗菌薬によってマイクロバイオームを変改し炎症を治める可能性について、幾つかの業績を踏まえた言及がある。

 またマウスモデルの研究ではあるが、抗菌薬(特にABPC)がマイクロバイオームの変改を通じて肺などの炎症を押さえ込むとの報告がある(He et al. Microbiome 7: 2019.

 ちなみに、マイクロバイオームの良い方向への修飾に有望とされてきた乳酸菌飲料などのprobiotics). プロバイオティクスとは、アンチバイオティクス(抗生物質)に対して提案された用語である。そこまでの⼒は持たないようだ。しかし今すぐできる着実な修飾方法として、食事の工夫(自然発酵食品など)が言われていることは周知の通りだ。

 ここで私の臨床経験を紹介する。多くの慢性難治性疾患患者さんを診療するのを見てきた中で、軽い上気道炎(いわゆる「かぜ」)に対してトスフロキサシンの初期、短期間(1~3日)の服用が卓効することを多数例(100例以上)で見ているであろう。

 これは投与期間の短さから言ってまた上気道炎の多くはウイルスが原因であることを考えると、抗菌薬としての効果ではあり得ない。抗菌薬が上気道のマイクロバイオームを改変し炎症を鎮めるという可能性がこの効果の唯一の説明である。さて慢性疾患の急性増悪はしばしば上気道炎から始まることはよく知られているが、こうして上気道炎を素早く鎮静させることによって、多くの呼吸器難病の急性悪化を阻止し得ていると感じている。

 これを踏まえると、COVID-19軽症例の悪化阻止のための治療選択肢として、あらゆる可能性を排除すべきではないと言われる中で、probioticsと並んで、ハイリスクの患者に限定して発病の最初期にごく短期間の抗菌薬投与による重症化予防効果を研究してもよいのではないだろうか。最初期(症状出現から1、2日以内)、短期間(1~2日)ということが重要で、COVID-19で重症化し入院に至った例での抗菌薬の使用が無効であることは既に幾多の報告で確認されていることである。

 ただし、私はこの方法を臨床の場で広く行うことをお奨めしているわけではない。というのも、耐性菌対策として近年官民挙げて進められてきた一次医療現場における抗菌薬の濫用を戒める運動はようやく成果を挙げてきたという声もあり、この流れを変えることはあってはならないからである。

 最後に、私の主張したいことを以下にまとめる。

 COVID-19は8割の人においては軽症のウイルス感染症に過ぎない。2割の人で免疫が適切に応答せず、ウイルスの増殖が続き、免疫の過剰応答(サイトカインストーム)が起こることが問題なのである。従ってCOVID-19医療の一つの要点は、感染した人が第2相、サイトカインストームに移行するのをどうやって防ぐかにある。そこにはマイクロバイオームと一体になった宿主免疫の複雑な応答が関与している可能性があり、そこを明らかにしてマイクロバイオームの修飾を通じて過剰な免疫活動を抑えるという観点からの治療方法の模索をもっと展開していくべきだと考える。

 

 

 

 

 
 

 

 
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