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あしたへ向かって

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血中抗SARS-CoV-2抗体検査キット4種の性能に関する評価結果

血中抗 SARS-CoV-2 抗体検査キット 4 種の性能に関する評価結果
(令和 2 年 5 月 20 日版)
【目的と方法】本検討は、COVID-19 の病原体である SARS-CoV-2 に対する抗体を、イム
クロマトグラフィーを原理として検出するキットの性能評価を目的に行った。供試した
患者検体は 2020 年 3 月 9 日から 5 月 9 日の間に東邦大学医療センター大森病院で収集さ
れた 100 検体(患者の重複を含む)の血漿とした。対象とした抗 SARS-CoV-2 抗体検出イ
ムノクロマトグラフィーキットは A 社、C 社、D 社、および E 社の計 4 社のキットを用い
た。リファレンスデータは、CLIA (化学発光免疫測定) 法を測定原理とする ARCHITECT
i2000SR (Abbott) の SARS-CoV-2 IgG 定性試薬により測定された Index 値について 1.4 以
上を陽性カットオフとして判定されたデータとした。なお、4 社のうち A 社、C 社、E 社の
キットは IgM および IgG を区別して検出できるが、リファレンスデータは IgG のみ検出す
るキットであることから、IgG の判定のみを評価対象データとした。
【結果】100 検体中 38 検体が ARCHITECT で陽性と判定された。A 社, C 社、D 社、お
よび E 社キットの感度および特異度は、それぞれ 92%、84%、89%、95%および 98%、97%、
89%、89%であった。陽性的中率および陰性適中率は、それぞれ 97%、94%、83%、84%お
よび 95%、91%、93%および 96%であった。感度は E 社のキットが最も高かったが、特異
度は A 社のキットが最も高く、感度は E 社のキットに次いで高かった。ARCHITECT で
Index 1 から 1.4 未満で SARS-CoV-2 IgG 陰性と判定された 3 検体あり、1 検体はイムノク
ロマトグラフィー法の全キットで陽性、残りの 2 検体は D 社と E 社のキットで陽性と判定
された。また、ARCHITECT の判定閾値を明らかに上回る検体でキットの測定結果が陰性
となった検体は、A 社で 3 検体、C 社で 6 検体、D 社で 4 検体および E 社で 2 検体であっ
た。このうち 2 検体はいずれのキットでも陰性だった。
n=100 A 社 C 社 D 社 E 社
感度 92% 84% 89% 95%
特異度 98% 97% 89% 89%
陽性的中率 97% 94% 83% 84%
陰性的中率 95% 91% 93% 96%
偽陽性 (件) 1 2 7 7
偽陰性 (件) 3 6 4 2
【考察】感度および特異度ともにキット間の性能の差異が大きく、使用するするキットによ
っては結果に大きく影響すると考えられた。また、ARCHITECT の陽性判定となる index
閾値付近の検体は、キット間の結果の差が顕著となることが示唆された。今回対象とした
キットの中で最も高い特異度は 98%(A 社)であり、抗体保有率が低い我が国のような場
合は、使用するキットによっては真の抗体保有率より高い値が示される可能性がある。本検
討は IgG のみを対象とした機器・試薬の検査成績をリファレンスとしたものである。今回
のレファレンスと異なる原理あるいは検出対象とする機器・試薬をレファレンスとした場
合は、異なる評価結果となる可能性がある。さらに、今回、偽陽性と判定された検体の中に
は、ARCHITECT で陽性と判定される index 値付近のものが含まれている。今後さらにデ
ータを蓄積し、ARCHITECT の判定アルゴリズムの検証を含めた検討が必要だと考えてい
る。
一般社団法人日本感染症学会 引用