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あしたへ向かって

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医薬品の回収問題、求めたい“柔軟さ”

 

日医工富山市)の医薬品回収というと、「ああ」とうんざりする方々もいらっしゃると思います。遡ると、2020年4月7日にニコランジル錠など15品目が、さらに5月18日にプラバスタチン錠など9品目の自主回収がありました(記事

 日医工の製品が立て続けに自主回収となったことは、現場の薬剤師としても大変残念なことです。これを機に別のメーカーの製品に変更するところもあるでしょう。また6月に収載される後発医薬品の採用にも大きく影響することになるのではないでしょうか。

 こうした回収は、日医工に限った話ではありません。記憶に新しいところでは、発癌性物質であるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)の検出により、ラニチジン製剤が自主回収になりました(記事)。

 他にも溶出性試験の規格を満たさなくなったから回収、原薬の調達が間に合わないから欠品という話は比較的頻繁にあるように感じます。もちろん、後発品、先発品を問わずに起こる問題です。

 「医薬品を作るメーカーとしてなってない」というご指摘はごもっともでしょう。そんなに律儀に回収しなくても、、と思わないでもありませんが、厳格な規定や法律の運用が、医薬品を医薬品たらしめている、“生命線”でもあると言っていいでしょう。

 ただ、これだけ回収が多いと、それは1企業の話に留まりません。例えば、先日の日医工のニコランジルの回収によって、他の企業に注文が流れ、先発品を含めたニコランジル製剤の供給制限が発生しています。

 先日、医薬品卸の営業担当者と話をしていたところ、現在流通制限がかかっているのは約800品目もあるという話を聞きました。多いか少ないかは見方が分かれるところはあるでしょうが、医薬品の供給に問題が生じており、それが日常になっている事実は受け止める必要があります。

 私もこれまでに、「これは供給制限がかかっている品目で、あなたの薬局には納品実績がないのでお届けできません」あるいは「注文いただいた製品の納期が来月になります」ということを頻繁に経験しています。次回処方に間に合わないのではないかと、ヒヤヒヤしながら過ごすことも少なくありません。

 「昔はそんなことはなかった」という声も聞こえてきそうですが、後発品の使用を促進してきたことによる弊害の1つなのかもしれません。先発品企業からしたら、後発品にシェアを奪われた結果、医薬品の売り上げが落ち、製造や流通に影響が出ているのではないでしょうか。後発品企業にしても、以前は初収載の薬価は0.7掛けだったものが、今では0.5~0.4掛けですから、余裕は少なくなっているに違いありません。

 医薬品の供給が、いつまでも綱渡りの状況であることは、当然よくないことです。後発品企業は、過去にダメ出しされていた安定供給に取り組み、信頼できる状況を作ってきました。先発、後発問わず、製薬会社が事業をきちんと継続できるために、過剰に薬価をたたくのはそろそろ止めるときなのかもしれません。

 また、回収についても、本当に回収に値するのかという検討が必要でしょう。もちろん厳格さをなくせということではありませんが、一方で柔軟さも必要ではないでしょうか。1企業の問題として片付けず、少し広い視点から検討することが求められるのではないかと考えています。

ひとてまい