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あしたへ向かって

トレンド、医療、政治、趣味について書いていきます

次亜塩素酸水を巡って

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、消毒用エタノールや塩化ベンザルコニウムなどの消毒薬の品薄状態が続いています。それに伴って安全性が高いとされる次亜塩素酸水がネット上で注目を集め、様々な製品が販売されていますが、ここに問題があります。

 緊急事態宣言が解除された5月に、数カ月ぶりに、高齢者のデイケアセンターを経営する古くからの友人とソーシャルディスタンス(social distancing)を考慮しながら食事をしました。積もる話の中で、次亜塩素酸水が話題になりました。彼女は「高齢者を預かっているので、消毒用エタノールだけでは不十分と思ったので、ちょっと高かったけど次亜塩素酸水の加湿器を注文して、万全にしたの」とうれしそうに言いました。その加湿器と同じものが、そのレストランにもあったので、彼女が「これこれ!」と言って指を差しました。その加湿器のラベルに目をやると、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸の文字が目に入りました。

 薬剤師の勘として「あれ?」とは思いながらも、久々に聞いた次亜塩素酸(HOCl)という名前に、詳しいことが何も思い浮かばなかったのですが、素朴な疑問を彼女に投げかけました。「次亜塩素酸ナトリウムは台所でおなじみの漂白剤。以前、消毒用アルコールが手に入らないと言って電話してきた時に、代わりに次亜塩素酸ナトリウムを薄めてテーブルやドアノブを拭くことができるよとアドバイスしたら、どういうわけかすごく嫌がったよね?それなのに、長時間部屋にいるお年寄りが、微量だけれども吸い込む可能性があるけど大丈夫?」と言うと、彼女は「信頼している人が薦めてくれた商品なのに、そんなはずはない!」と言って怒り出しました。素朴な疑問とはいい、中途半端なことを言ってしまったと思いながら、帰宅して次亜塩素酸水について復習してみました。

 次亜塩素酸水は食品添加物で「塩酸または塩化ナトリウム水溶液を電気分解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である」と厚生労働省は定義しています。ただし、「次亜塩素酸ナトリウムと塩酸またはクエン酸等をあらかじめ混和した水溶液を販売することは、この当該水溶液中で化学反応が生じていると考えられることから、その販売は認められない(一部省略)」となっています。

 次亜塩素酸ナトリウムは誤って飲み込んでしまっても、胃酸があるので、あまり問題にはなりませんが、噴霧されたものを吸い込むことで呼吸器系の健康被害が起こる可能性があります。現在、多くの保育所で次亜塩素酸水の加湿器が使用されていると聞きますが、次亜塩素酸ナトリウムから作られたものではないことを願いつつ、今回のコロナ騒動で、彼女のような認識で高齢者施設に広がる可能性があることが気になります。次亜塩素酸水の正しい知識の啓蒙が必要ではないかと思ったので、あえて記事にしてみました。ちなみに、同日の夜、冷静になった彼女に、厚労省の通達をかみ砕いて説明した文章を書いてファクスし、判断を委ねることにしました。

 後日、5月29日に製品評価技術基盤機構(NITE)は、COVID-19に対する次亜塩素酸水について、現時点では噴霧での使用は安全性について科学的な根拠が示されていないなどとして、使用を控えるよう呼びかけています。

 さて、今回は、テーマになった次亜塩素酸水についてです。ズバリ、次亜塩素酸水を英語で言うと

1. hyperchloric acid water
2. hyperchlorous acid water
3. hypochloric acid water
4. hypochlorous acid water








































答え:
4. hypochlorous acid water(chlorous acidは亜塩素酸、hypoは酸化数の少ない「亜」よりさらに酸化数が少ないことを表します)