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あしたへ向かって

トレンド、医療、政治、趣味について書いていきます

国際薬剤師薬学連合「COVID-19ガイダンス」日本語版を公開

薬剤師がまん延防止に貢献する

 まず、Part1の臨床情報では、COVID-19の疾病予防やその症状、ワクチンを含めた臨床試験の進捗状況などが紹介されています。

 特に、私にとって大変印象的だったのは、冒頭の「目的」に述べられている内容です。そこには、「新型コロナウイルスによる感染症は、政策決定者、医療従事者、メディア、コミュニティの積極的な関与によって予防し、アウトブレイクを⾷い⽌めることができる。(中略)本⽂書は、薬剤師や薬局従事者が本疾患のまん延を防⽌し、医療システムにおける効率的な管理に貢献することを⽬的としている」と記載があります。

 このガイダンスを活用することで、薬局・薬剤師が公衆衛生へ貢献を明確にし、実際にそれが可能であることを明確に述べています。現場の薬剤師は大変勇気づけられるはずですし、その部分だけでも一読の価値があると感じています(私たちが、この翻訳に取り組んだ大きな理由の1つでもあります)。

 Part2では、薬局での感染防止の方法について具体的かつ詳細に様々方法が紹介されています。薬局における感染対策については、日本の薬局が4月の感染拡大期に既に取り入れているものも多く、あまり新しさは感じないかもしれません。

 一方、「地域薬局の責任と役割」として、医薬品の供給と並んで、市民への情報提供や啓発、カウンセリング、疾病予防の推進が挙げられていることが、印象的でした。また、私たちのプロジェクトグループが参考にしているオーストラリア、カナダ、イギリスなど、各国の薬剤師のCOVID-19対策への対応などについても書かれています。

 Part3は、いわゆるFAQ集です。薬局で患者からよく質問されるような内容から、「このウイルスは研究室で開発された」といったウェブサイトなどで見かける迷信めいたデマへの回答なども、真面目に書いてあり興味深いです。

 個人的に面白いと思ったのは「薬剤師が地域社会に提供できる心理的介入とは?」といった質問です。その答えの詳細については、同ガイダンス翻訳版を実際に読んでもらいたいのですが、簡単にまとめると「薬剤師や薬局スタッフは、地域の⼈たちを安⼼させたり、情報を提供したりすることで、⼼理的なサポートをすることができます。不確かな時代に、質の⾼い情報を与えられるロールモデルとして、薬剤師が与える影響は決して⼩さくありません」といったことが書かれています。

翻訳許可を得てから1カ月で公開へ

 

 日本語版「FIP COVID-19 ガイダンス」の作成過程と公表までの経緯についても、少し紹介したいと思います。

 FIPが同ガイダンスの最新版を、FIPのウェブサイト上に公開したのは20年7月14日。同時にFIPからメールとFacebookを通じて案内が届きました。さっそくチェックしてみると、COVID-19についての臨床上の最新情報だけでなく、各国の薬局の取り組みの具体例やFAQなどが充実しており、日本の薬局薬剤師にとっても、勇気づけられ、役立つ情報だと感じました。

 何よりも、学会や関係団体ごとに個別に出されていた情報を、薬剤師を対象として1つにまとめられていることが大変心強く感じ、このガイダンスを少しでも早く現場の薬剤師の皆さんに届けられないかと思いました。

 そこでFIPへガイダンスの翻訳許可を得るメールを送る一方で、Facebookの薬局情報グループと、私が開催している研修(3☆ファーマシスト)に向けて、ボランティアでのガイドダンスの翻訳を担当してくれるスタッフを募集。幸運にも15人の薬剤師が手を上げてくれました。

 この15人をグループに分けて翻訳チームを作り、さらにグループ相互で翻訳チェックを行った後、京都大学SPH健康情報学教授の中山健夫先生を中心とする翻訳家と、バイリンガルの学生を含むレビューボードを編成し、訳語の検討など最終仕上げを行い、最終版としました。

 この総勢20人のボランティアスタッフのおかげで、FIPと京大SPH健康情報学とのMemorandum of Understanding(MoU:翻訳の覚書)の締結から、わずか1カ月ほどで、68ページにもおよぶガイダンスを翻訳して公開させることができました。

 このガイダンスには、単に薬局でのCOVID-19対策にとどまらず、地域薬局での薬剤師の幅広い活動について、多くの示唆が含まれていると感じました。