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あしたへ向かって

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3歳幼児にシメチジン粉砕の処方は何の疾患か?

今週のお題「最近見た映画」

 


 

 

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以前から定期的に来局する3歳男児がいます。2歳ごろから頻繁に39℃を超す熱を出し、そのたびに扁桃腺が腫れたということで、解熱薬等の処方箋を持って来局していました。ある日、髄膜炎の疑いで入院し(結果的に髄膜炎ではなかったそうですが)、入院中からシメチジン(商品名タガメット他)を服用していたとのことで、退院後に「シメチジン錠200mg(粉砕)1回0.75錠(1日1.5錠)」の処方箋を持って来局しました。

 この年齢で消化性潰瘍を疑うことはまずないかと思いましたので、シメチジンは適応外使用の多い薬剤の1つですので、当然、本来の適応症とは異なる目的で処方されたと推測します。ざっと調べると、シメチジンは石灰沈着性腱板炎、慢性蕁麻疹、帯状疱疹、尋常性疣贅など、多くの炎症がみられる疾患に使われているようです。

 お母さんに「胃潰瘍の薬が出ていますが、今日はどうされたのですか」と聞いてみました。すると、「頻繁に発熱して扁桃腺が腫れるので、大きな病院で診察してもらったんです。そうしたらPFAPA症候群と診断されて、この薬をしばらく飲んでくださいと言われました」とのこと。

 PFAPA症候群とは、その主な症状である周期性発熱(Periodic Fever)、アフタ性口内炎(Aphthous stomatitis)、咽頭炎(Pharyngitis)、頸部リンパ節炎(cervical Adenitis)の頭文字を取ったもので、乳幼児期に発症することが多い疾患です。主要症状は、39℃以上の発熱が3~6日続くエピソードを3~8週間周期で規則的に繰り返し、発熱以外にも咽頭炎、アフタ性口内炎、リンパ節炎などを特徴とします1)。Thomasの診断基準を表に示しますが、意外と日常的に遭遇する疾患ではないかと思います。


 

PFAPA症候群の診断基準

 PFAPA症候群の原因としては、細胞性免疫やサイトカイン調節機能の異常などが推測されていますが、詳しいことは分かっていません。治療薬としては、シメチジンやファモチジンガスター他)などのH2受容体拮抗薬や副腎皮質ステロイドといった抗炎症薬が使用されるようです。シメチジンの用量は、15~30mg/kg/日を1日2回に分けて使用することが多いようです

 シメチジンを予防的に投与することで、3分の2の患者さんの発作を抑制でき、3分の1程度の患者さんの発作を完全に消失させることができるとされてきましたが、最近は約半数の患者さんで発作が完全に消失したとも報告されています。作用機序はよく分かっていませんが、シメチジンの免疫調節作用が関与していると、推測されています。

 3歳男児の薬歴を改めて確認すると、2~3カ月に1回は発熱で近隣の小児科を受診していましたが、医療機関を受診せずに様子を見た発熱を含めると、より頻繁に発熱していたのかもしれません。PFAPA症候群は、症状が長引く場合もあるようですが、10歳を目安に自然に症状が見られなくなるとも言われていますので、お母さんにはその旨を伝えました。

 では、シメチジンを粉砕した際の味はどうなのでしょうか。インタビューフォームを見ると、原薬の味は「苦い」と書いてあります。粉砕すると苦くなってしまうので、お母さんには「苦いので、飲むのを嫌がる場合は砂糖を加えたり、練乳やアイスに混ぜて飲みやすくしてください」とアドバイスしました。次の来局時に確認したところ、チョコレートと一緒に飲ませたら、飲んでくれたとのことでした。

 改めてPFAPA症候群の診断基準を見ると、1~2カ月おきにこのような症状が出るお子さんは意外といるのではないかと思います。実際、当薬局ではもう1人PFAPA症候群としてシメチジンを調剤した子どもがいました。もし、シメチジンの処方箋を見たら、PFAPA症候群をおもいおこし、薬歴で発熱の既往をチェックしてみます。

 

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