にほんブログ村 教育ブログ 生涯学習・教育へ
にほんブログ村 http://pharmacist2.jugem.jp/ https://confessiondemasquepharmacist.wordpress.com/2021/01/10/

あしたへ向かって

トレンド、医療、政治、趣味について書いていきます

アジアにおける在宅医療のCOVID-19対応

今週のお題「鍋」

 


 

 


 

日本、地域に開かれた「コミュニティー・ホスピタル」への挑戦

 日本は、65歳以上の高齢化率が4カ国の中で最も高い。人口1万人程度の中学校区を単位として想定されている「地域包括ケアシステム」を中心に、在宅医療、訪問看護、生活支援・介護予防などのサービスが患者に提供される。在宅医療の提供者の中心は、在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院だ。

 日本における2000年度の診療所・病院死は81.0%、自宅死は13.9%、施設死は2.4%で、2016年度はそれぞれ75.8%、13.0%、9.2%だった。ここ数年の特徴は「施設死」の増加「自宅での看取りは、家族の負担などの問題に直面してしまう。一方、特別養護老人ホームなどの居住環境の向上、看取り介護加算の新設などが施設死の増加に影響しているのではないか」と述べた。

 ある病院では、地域に開かれた「コミュニティー・ホスピタル」を掲げ、在宅医療を提供しているところもある。急性期は関連病院が、亜急性期は病棟ケアが、慢性疾患管理や予防は同院のプライマリー・ケア外来が担い、患者が高齢や癌の進行などで通院困難となれば在宅医療を提案して在宅慢性期または終末期ケアを行う。

ある医師は「在宅療養支援病院という制度の枠組みのみならず、地域に開かれた『コミュニティー・ホスピタル』という概念を広めていきたい」と意欲を見せている。今後は、在宅療養支援病院と在宅療養支援診療所の連携や分担、地域包括ケア病棟の活用方法などを地域で広く検討していくことを課題に挙がった。

 COVID-19流行下では、在宅部門を2チームに分け、建物も完全に分離して対応に当たったことを紹介。ICTの活用などで医師や看護師間の連絡の効率化が図られたなどの利点がある一方、医師や看護師同士のコミュニケーションが少なくなり気分転換ができなくなったり、診療のカバーが難しくなったりする場面があったという。

台湾、SARSの経験を生かしたCOVID-19対応の実現

 台湾では、2016年に在宅プライマリーケア(HBPC:Home-Based Primary Care)と在宅緩和ケア(HBPalC:Home-Based Palliative Care)を統合した新しい在宅医療(HBMC:Home-Based Medical Care)が開始された。在宅医は尿道カテーテルなどの交換など一部の医療行為に限定されていたが、これにより薬の処方や検査の依頼なども可能となった。

 在宅医療ではSNS(交流サイト)も活用されている。皮膚科のコンサルトでは、在宅医が患者の患部を写真に撮り、SNSで皮膚科医に写真を送信してコンサルトを依頼。皮膚科医の意見を基に在宅医が最終診断をする。

 2003年にSARSを経験した台湾では、その後あらゆる感染症パンデミックに関して準備が行われ、COVID-19の感染拡大の抑止にも成功している。COVID-19流行時における在宅医療のフローは、まず訪問前に旅行歴やCOVID-19患者の接触歴を評価し、「あり」の場合は最初にオンライン診療を行う。さらに訪問が必要な場合は、PPE(個人防護具)を着用し、熱がある場合はER(救命処置室)への搬送となる。旅行歴などがない場合は、マスクや手指衛生などの一般的な防護で訪問するといったように、リスクに合わせたルール付けを行っている。

シンガポール、COVID-19による高齢者の孤独を防ぐ試み

 シンガポールでは、急速な高齢化が進んでおり、2015年から病院主導の医療から地域主導の医療へと移行している。高齢者は、活動の状況に応じて高齢者アクティビティーセンター(SAC:Senior Activity Centre)、高齢者ケアセンター(SCCs:Senior Care Centres)、自宅でのケアが受けられる。
 
 在宅ケアサービスでは、在宅医療・看護のみならず、在宅リハビリテーション訪問介護などの包括的なケアが提供されている。しかし、様々なケア提供者がそれぞれのレベルでケアを提供しており、ケア提供者同士の調整が図られていないことが問題となっているという。

 COVID-19の流行により多くの地域サービスが停止したシンガポールでは、特に独居高齢者の社会的なつながりに影響が出た。携帯電話やスマートフォンを持たない高齢者の多くは、孤独、社会的孤立、精神・身体の健康への影響が大きく出たという。こうしたことに対応するため、ボランティアなどから寄付された携帯電話などを独居高齢者に届け、使用方法を教え、医療提供者とのつながりを維持するための試みが行われた。

英国、COVID-19でもたらされる新たな疾病への課題

 英国では、二次医療へのゲートキーパーとして「家庭医」が機能している。地域医療の提供者は、家庭医の他にNHS(National Health Service:国民保健サービス)と契約を結んでいる薬局、薬剤師、看護師など多岐にわたり、家庭医が調整役も兼ねている。家庭医の所属するクリニックでは、平均9000人の登録患者リストを保有している。

 医療・ケア提供者はそれぞれにサービスを提供するため、サービス提供者間の連携が課題となっている。複雑な患者やサービスの重複利用者を対象に関係者が集まり開催した会議への報酬付け、全てのケア提供者が患者情報を共有できるオンラインポータル「Coordinate My Care」の開設、印刷したカルテの患者への提供といった工夫がされているという。

 英国では、自宅療養しているCOVID-19患者や外出控えをする患者への医療従事者の介入が問題となった。筋力の低下など自宅の引きこもりによってもたらされる疾患が多く発生し、ライフスタイルの変化に伴う新たな課題に直面している。さらにCOVID-19感染拡大は、地域組織やボランティアが隠れたハイリスク住民を支援する大きなきっかけになり、COVID-19により孤立した脆弱な患者を地域でケアする事例などがあったことが紹介されていた