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フェーズ2試験で英国のCOVID-19入院患者の症状改善を促進

 

英国Southampton総合病院のPhillip D Monk氏らは、COVID-19を発症し入院している患者に対する、吸入インターフェロン(IFN)β-1a製剤SNG001の有効性と安全性を検討するために、二重盲検のフェーズ2試験を英国内9施設で実施し、14日間の投与でプラセボに比べ有意な症状改善が見られたと報告した。

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 IFN-βは、ウイルス感染時に最初に誘導されるサイトカインで、ヒトの肺では自然免疫を誘導する主要な因子であることが知られている。In vitro実験では、SARS-CoV-2がIFN-βの放出を抑制することが示されており、先に行われた臨床試験は、COVID-19患者では、重症者ほどIFNの活性が低下していることを示唆した。また、併存疾患がある人、高齢者、免疫抑制療法を受けている患者などのハイリスク群では、そうでない人々に比べIFN-βの産生が減少していることから、これが、肺疾患の重症化のリスクを高めていると見られている。

 SNG001は、ネブライザーで噴霧化して吸入するタイプの組換えIFN-β製剤で、ウイルス性下気道疾患の治療を目的として開発された。吸入処方であるため、肺に十分な量のIFNβを送達できる一方で、全身への影響は小さいと考えられている。喘息やCOPDの患者230人にSNG001を投与した臨床試験では、忍容性が示されている。さらに、呼吸器ウイルス感染症を発症した喘息患者を対象とするフェーズ2試験では、プラセボよりも肺機能を改善する効果が大きかったと報告されている。そこで、SNG001がCOVID-19患者の下気道症状の重症化を抑制し、回復を促進する可能性について検討するために、フェーズ2パイロットスタディを計画し、

 試験には英国の9施設が参加した。対象は、COVID-19の症状があり、入院した18歳以上の成人患者。PCR検査またはポイントオブケア検査によって、SARS-CoV-2感染が確定してから24時間以内の患者を選んだ。ネブライザー用のマウスピースを使えない患者(挿管中など)、妊婦や授乳中の女性などは組み入れから除外した。

 条件を満たし試験参加に同意した患者は、1対1の割合でSNG001群(IFNβ-1a 6ミリユニット)またはプラセボ群に割り付けた。両群とも参加施設の標準治療を併用した。割り付け薬はネブライザーですぐ使えるように、シリンジに充填した水溶液の状態で提供された。これを1日1回吸入してもらい、最長14日間まで続けた。14日未満で退院した患者については、電話やメールを使って評価を継続した。追跡は28日後まで行った。

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 主要評価項目は、投与期間中の臨床状態の変化とし、WHO Ordinal Scale for Clinical Improvement(OSCI)を用いて評価した。OSCIのスコアは、0が症状なしで、8は死亡となる。副次評価項目は、Breathlessness Cough and Sputum Scale(BCSS)スコアの変化、安全性と忍容性にした。BCSSスコアは息苦しさ、咳、喀痰の3項目を0~4点で評価する。
 2020年3月30日から5月30日までに、116人の患者をスクリーニングし、条件を満たした101人がランダム割り付けに参加し、50人のSNG001群と51人のプラセボ群に割り付けた。このうち割り付け薬を実際に使用した98人(SNG001群48人とプラセボ群50人)をintention-to-treat解析の対象とした。28日後まで追跡を完了できたのは、SNG001群39人とプラセボ群36人だった。

 98人の平均年齢は57.1歳で、59%が男性、80%が白人だった。54%がベースラインで、高血圧、心血管疾患、糖尿病、慢性肺疾患、癌といった併存疾患を有していた。ベースラインでSNG001群の37人(77%)とプラセボ群の29人(58%)が酸素補充療法を必要としていた(OSCIスコアが4以上に相当)。糖尿病はプラセボ群の方が多く(33%と12%)、心血管疾患も同様だったが(30%と19%)、高血圧はSNG001群の方が多かった(41%と69%)。

 SNG001群の患者はプラセボ群に比べ、14日間の治療終了後(15または16日目に評価)のOSCIスコアが改善する割合が高いこと、オッズ比は2.32(95%信頼区間1.07-5.04)になった。SNG001群は28日時点でOSCIスコアが改善している割合はさらに高く、オッズ比は3.15(1.39-7.14)

 治療期間中に、OSCIスコアが1(活動制限無し)まで改善する割合も、SNG001群で高かった。オッズ比は2.19(1.03-4.69)だった。SNG001群では、28日時点でスコアが1になっている可能性はさらに大きく、オッズ比は3.58(1.41-9.04)になった。

 16日目の時点で、SNG001群の73%とプラセボ群の69%が退院しており、28日時点では81%と75%が退院していたが、いずれの時点でも、退院のオッズ比には差は見られなかった。

 プラセボ群では3人が死亡したが、SNG001群に死者はいなかった。15日目または16日目の時点でOSCIが5以上(重症または死亡)だった患者は、プラセボ群には11人(22%)いたが、SNG001群では6人(13%)で、オッズ比は0.21(0.04-0.97)だった。

 SNG001群では、副次評価項目のBCSSスコアの改善も大きく、14日間の治療期間中のプラセボ群との差は-0.8点(-1.5から-0.1点)になった。BCSSを構成する3要素のうち、息苦しさの程度はSNG001群で有意に軽減されており、咳の改善レベルには有意差はなかった。また、喀痰はベースラインから症状が軽く、両群の患者にとって問題となる症状ではなかった。

 SNG001群の26人(54%)とプラセボ群の30人(60%)に治療下で発現した有害事象が報告された。最も多かったのは頭痛で、SNG001群の7人(15%)とプラセボ群の5人(10%)に報告された。重篤な有害事象はそれぞれ7人(15%)と14人(28%)に報告されたが、すべて割り付け薬とは無関係と見なされた。

 これらの結果から著者らは、SNG001による治療はCOVID-19入院患者の症状を改善し、回復を促進する傾向が見られ、懸念されるような有害事象は報告されなかったことから、さらに大規模なフェーズ3試験を進めることが適切だと結論している。この研究はSynairgen Research社の支援を受けている。