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高齢のCOVID-19患者にせん妄が起こる?頻度は?

米国Massachusetts総合病院のMaura Kennedy氏らは、米国の7施設の救急部門を受診した65歳以上のCOVID-19患者817人の医療記録を分析して、受診時点でせん妄を起こしていた患者の頻度は28%だったと報告した。高齢者のせん妄は転帰不良に関係する上、発熱や息切れがないCOVID-19患者にも起こっていたことから、COVID-19患者の症状チェックリストにせん妄を加えることが重要だと述べている。結果は2020年11月19日にJAMA Network Open誌電子版に掲載されている。

 

せん妄は、救急部門を受診した高齢者には一般的に見られる。意識レベルの変容が特徴で、見当識障害や認知機能の障害を伴う。せん妄を起こした患者は、入院期間が長引き、死亡リスクが高くなる。これまでの研究でも、高齢のCOVID-19入院患者がせん妄を起こしたことが報告されている。しかし、救急部門を受診した高齢のCOVID-19患者が、どのくらいの頻度でせん妄を起こすのかは、詳しく調べられていなかった。

 そこで著者らは、2020年3月13日以降に米国の7施設(北東部のマサチューセッツ州メイン州コネティカット州、中西部のミシガン州、南部のノースカロライナ州)の救急部門を受診した高齢のCOVIV-19患者を対象に多施設コホート研究を行い、せん妄を起こした患者の割合を調べることにした。

 組み入れ対象は、連続する65歳以上のCOVIV-19救急受診患者で、原則として鼻腔スワブ標本によるPCR検査で診断が確定した場合とした。ただし、PCR検査用の器具が不足した施設もあり、約1%の患者は胸部X線画像またはCT画像の典型的なすりガラス様陰影などに基づいてCOVID-19と診断されていた。また参加施設により、その地域のCOVID-19患者有病率や救急患者数に違いが見られたため、原則として65歳以上のCOVID-19患者全員の診療記録を調べるが、少なくとも30人のせん妄患者が受診するまで追跡を続けることにした。

 主要評価項目は、医療記録に記述されている、救急部門受診時のせん妄の診断とした。せん妄の判定はスクリーニングツールのConfusion Assessment Methodを使用した。せん妄の他にどんな症状が見られたかについては、米国CDCやWHOのCOVID-19感染チェックリストに基づいて、25種類の症状と兆候の有無を調べた。その他に診療記録から、患者の人口動態的特性、飲酒、喫煙、向精神薬の使用、併存疾患、臨床アウトカムなどに関する情報も調べた。
 7施設のCOVID-19高齢患者、合計で817人の診療記録を調べた。平均年齢は77.7歳、386人(47%)は男性、493人(62%)が白人、215人(27%)が黒人、54人(7%)はヒスパニック系またはラテン系の米国人だった。213人(26%)は高度看護施設入所者だった。

 救急部門受診時に多かった症状は順に、発熱459人(56%)、息切れ420人(51%)、咳412人(50%)、酸素飽和度90%未満の低酸素症324人(40%)、脱力感241人(30%)、せん妄226人(28%)となった。せん妄は6番目に多く見られた症状だった。

 せん妄の判定は医師が行っていた患者が178人(79%)、看護師が行っていた患者が133人(59%)だった。せん妄評価ツールを使用したことが記録されていた患者は50人(22%)に過ぎないため、見落としがあるか、臨床医がツールを使用したのに記録しなかった可能性がある。せん妄を起こした226人のうち、37人(16%)は主な症状がせん妄だった。また、発熱や息切れは認められないせん妄患者が84人(37%)いた。

 せん妄の症状として多く見られたのは、意識障害122人(54%)、見当識障害96人(43%)、低活動性せん妄症状45人(20%)、興奮または過活動性せん妄症状35人(16%)だった。せん妄患者のうち112人(50%)は、せん妄発症から2日以内に救急部門を受診していた。また、213人(94%)が入院していた。

 せん妄の危険因子について検討したところ、年齢が75歳超、介護施設入所者または要介護者、視覚障害者、聴覚障害者、認知障害認知症患者、脳卒中の病歴、パーキンソン病、精神的健康状態、などの要因がある人はせん妄のリスクが有意に高かった。これらうち共変数を調整した多変量解析でも有意に相対リスクが高かったのは、年齢が75歳超(1.51:95%信頼区間1.17-1.95)、介護施設入所者または要介護者(1.23:0.98-1.55)、向精神薬の使用歴(1.42:1.11-1.81)、視覚障害者(1.11:0.78-1.55)、脳卒中歴(1.47:1.15-1.88)、パーキンソン病(1.88:1.30-2.58)だった。

 せん妄を起こした患者は、そうでない患者に比べ、救急部から入院するリスクが高く(調整相対リスクは1.06:1.02-1.10)、ICU入院(1.67:1.30-2.15)や院内死亡(1.24:1.00-1.55)のリスクも高く、退院後にリハビリ施設に入所する可能性(1.55:1.07-2.26)も高かった。

 これらの結果から著者らは、救急受診した高齢のCOVID-19患者では、発熱や咳などの典型的な症状がなくても、せん妄を起こしていることが少なからずあり、せん妄は臨床アウトカムの悪化とも関連していた。そのためCOVID-19患者のチェックリストにせん妄の評価を含めることが重要だと結論している。この研究は米国の支援を受けているとのこと。