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あしたへ向かって

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コロナ制圧タスクフォース、COVID-19重症化因子としてDOCK2を同定

非高齢化患者の重症化因子を5番染色体上で発見
 コロナ制圧タスクフォースはアジアで初めて、COVID-19患者と対照者との遺伝子型を網羅的に比較する大規模ゲノムワイド関連解析を実施した(非高齢・重症患者群440人vs対照群2377人)。その結果、5番染色体の長腕5q35.1上のDOCK2遺伝子の近傍にあるゲノム配列の多型(rs60200309)が、65歳未満の非高齢者における重症化リスクを2倍に高めることを発見した。このバリアントは、日本人を含む東アジア人の集団では約10%と高頻度に見られる。一方、研究が先行する欧米人集団では、ほとんど認められないほど低頻度であることが判明した。つまり、日本人を含むアジア人集団に特有の重症化因子の有力候補である可能性が示唆されるという。

 

DOCK2(Dedicator of Cytokinesis 2)がコードする蛋白質は、CDM蛋白質ファミリーに属する。これまでの研究から、リンパ球の活性化、リンパ球の遊走、Ⅰ型インターフェロン(抗ウイルス活性に重要な役割を持つ)の産生に重要な役割を持つことが知られている。また、この遺伝子を欠損すると免疫不全に陥ることも分かっている。金井教授は「DOCK2をコントロールできれば、ウイルス感染症に対する創薬に結び付くかもしれない。またバリアントを分類することで、重症化を判定するトリアージ(傷病者の緊急度に応じて医療行為の優先順位を決めること)にも使える可能性もある」と語った。

 ただ、DOCK2遺伝子領域のバリアントだけでは重症化の集団間の違いを説明することはできなかった。また、最近の感染流行の中心となっている変異株については、十分に検証できていない。金井教授の後任としてタスクフォースを引き継ぐことになった慶應義塾大学医学部呼吸器内科の教授は、「今後更なる研究を進めるため、国による支援も求めていきたい」と訴えている。

 

日本人ではAB型の重症化リスクが1.4倍
 タスクフォースでは、ABO式血液型とCOVID-19重症化リスクの関わりについてもゲノムワイド関連解析した。その結果、日本人集団における重症化リスクはAB型で1.4倍、A型・B型でほぼ不変、O型で0.8倍になったという。東京医科歯科大学副学長の木村彰方氏は「血液型が重症化に関わるメカニズムは分かっていないが、65歳未満の重症者では血液型で明らかな違いがある」と語った。ただし、ウイルスのかかりやすさと血液型には関連性はなかったという。

 どのような基礎疾患や体質を持つ人が重症化しやすいのかは、メンデルランダム化解析を実施した。メンデルランダム化解析とは、2つの疾患や表現型におけるゲノムワイド関連解析の結果を互いに比較することで、疾患・表現型の間における因果関係を推定する遺伝統計解析手法のこと。その結果、日本人では、肥満や痛風高尿酸血症の発症リスクがCOVID-19の重症化のリスクになるという因果関係が示唆される結果となった。

 肥満は年齢・性別と並んで新型コロナウイルス感染の主要な重症化因子の1つであり、痛風高尿酸血症は、疫学研究を通じて日本人の重症化・死亡危険因子であることが判明している。本解析結果は、これらの因子が直接的に重症化の原因となっていることを示唆する結果と考えられるという。