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あしたへ向かって

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Moderna社のワクチンに見られた遅延皮膚反応

mRNA-1273のフェーズ3試験では、初回接種後、84.2%の患者に接種部位反応が見られた。加えて、接種から8日後以降に接種部位の周辺に、紅斑、硬化、圧痛などを含む遅延皮膚反応を経験した患者が、初回接種後は0.8%、再接種後には0.2%いたが、症状は4-5日後に消失したと報告。

 

患者1には、上腕部に大きな環状の発赤と腫脹が認められ、掻痒もあった。患者2、6、11の上腕部には、広範な浮腫状の発赤と疼痛があった。患部が熱を持ち、痒みを感じた患者もいた。患者3の発赤部の縁は不明瞭で、掻痒と疼痛を訴えた。一部の患者の患部は硬化しており、患者8には、掻痒、疼痛、色素沈着なども見られた。腕の局所的な発疹に加えて、2人の患者は、それ以外の皮下症状も経験した。患者5には掌と指の腫脹が、患者6には肘に蕁麻疹様の膨疹が見られた。一部の患者は、遅延皮膚反応と同時に、全身性の反応(疲労感、筋痛、頭痛、悪寒、リンパ節腫脹、発熱など)も経験した。12人のうち8人は、過去にアレルギー反応(鼻炎、蕁麻疹、ハチ毒アレルギー、造影剤アレルギー、ペニシリンアレルギーなど)

 

多くの患者は、氷による冷却や抗ヒスタミン薬などの治療を受けた。一部の患者は局所または傾向ステロイドによる治療を受けた。1人の患者は蜂巣炎が疑われたため、抗菌薬の治療を受けた。皮膚反応は、発症から中央値6日(範囲は2~11日)で消失。

 

 この12人には含まれないが、広範囲にわたる遅延皮膚反応を示した患者の皮膚生検標本を観察したところ、表層血管周囲と毛包周囲へのリンパ球浸潤がある一方で、好酸球はまれで、肥満細胞が散在していたことから、患者が経験した症状は、遅延型皮膚反応またはT細胞媒介性過敏症によるものであるという仮説が立てられる。

 

12人全員が再接種を受けた。半数の患者は、初回接種後のような広範囲にわたる局所反応を経験しなかったが、3人は初回と同様の反応を、3人は初回より軽いが同様の症状を示した。それら6人において、再接種から皮膚反応が発現するまでの日数の中央値は2日(範囲は1~3日まで)で、初回より早かった。

 集団接種の規模が大きくなれば、こうした反応を経験し、受診する患者が増えると予想もされる。遅れて発現する皮膚反応に関する情報が行き届いていなければ、不要な抗菌薬の処方が増える可能性があるから、こうした症例の情報を収集し、疫学的な特徴を明らかにして、広く情報提供することにより、人々が安心して接種を完了できるようになることを私個人としては願っている。