皮膚科外来に「虫刺され」の患者が増えたワケ
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6月の後半は本当に忙しい毎日でした。そう、ワクチン接種がスタートしたからです。
ワクチン予約の初日は大混乱で、聞くところによると、夜中からずっと並んでいた高齢者もいたとかききました。
私たちが出勤してきた朝には、予約希望の人が長蛇の列になっていました。混雑を目の当たりにしたとき、最初は何が起こっているのか分からず、戸惑いました。電話も鳴りっぱなしで、対応に追われてどこも大変だったようです。
しばらくすると、混雑は収まりましたが、今度は実際の接種が始まり、準備に追われることになりました。看護師さんたちが集まって、注射器にワクチンをセットしていきます。バイアルに生理食塩水を入れて、そっと混ぜて、シリンジに吸って、気泡を除去して……と。バイアルから吸ってすぐ接種できるわけではないのと、mRNAという不安定なワクチンなので、みんな神経を使いながらワクチンを作っていたとききました。
混乱の中、接種がなんとか進んでいき、しばらくたったころ。梅雨も本格化し、雨が続いていました。そして急に、皮膚科外来に、「虫刺され」の患者さんが増えたとのことです。
「虫に刺されたんです。かゆくて痛くて……」
「今日はどうされました?」
「あ、虫に刺されたんです!かゆくて痛くて!」
見せていただくと、左上腕の肩付近から10センチ近く腫れていました。
虫刺されには見えず、
「あのー、もしかして、ワクチン、打ちました?」
と尋ねると、
「え? あ、ワクチン……、打ちました」。
「ワクチンによる腫れですね」
と言うと、
「えっ!? そんなことってあります?」
私とかからすると、見慣れた、各種ワクチン後の上腕の腫脹なのですが、ご本人は、ワクチンのせいではないのでは?と疑っています。
「だって打ったの、1週間前なんですよ? 今頃腫れます?」
これは私も最初知らなかったのですが、何人も同じような方が来て分かりました。コロナワクチンは、打った当日、翌日ではなく、4~5日たってから腫れることが多いようです。
そのせいか、ワクチンとの因果関係に思い至らず、「腕が腫れた」と言って来院する方が何人もいました。そしてなぜか、皆、「虫刺されです」と主張するのです。
虫刺されじゃなくてワクチンです、と説明するのですが、なかなか受け入れてくれないことも多かったです。
と同時に、虫刺されの人もたくさん。庭掃除をしていて蚊に刺された、ノミに刺された、マダニに刺されて腫れた……などなど。
こんなことが頻繁にあるので、「虫刺され」と書かれて、言われていたら、
……ワクチン? 帯状疱疹? それとも本当の虫刺され?……
今日この頃です。