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あしたへ向かって

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頸椎症の考え方と漢方処方

頸椎症とは、頸椎の椎間板や椎骨が変性し、首や肩、後頭部、手などに、痛みやしびれなどの症状が発現する疾患です。椎間板や椎骨の変性により、脊柱管や椎間孔が狭くなり神経が圧迫され、症状が生じます。
 原因は、背骨の椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板の変性や、骨の変形、靭帯の硬化などにより、脊髄や神経が圧迫されることにあるといわれています。

椎間板の変性は、主に加齢により生じます。悪い姿勢や猫背が原因となることもあります。脊髄が圧迫されて起こる場合を「頸椎症性脊髄症」、脊髄から分かれて上肢に出ていく神経根が圧迫されて起こる場合を「頸椎症性神経根症」と呼びます。頸椎症性神経根症では、症状の多くが左右どちらか片側に出ます。

 よく見られる症状は、首や肩、後頭部、上肢の痛み、手指のしびれ、肩凝り、上肢の筋力低下等です。手指の動きが悪くなり、ボタンの止め外し、ひもを結ぶ、箸を使う、字を書く等に支障を来す場合もあります。足のしびれ、歩行困難など、下肢あるいは排泄機能に症状が出る場合もあります。

 西洋医学では、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)や神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン[商品名リリカ他]等)、筋弛緩薬等が使われます。頸椎牽引、理学療法も行われます。日常生活に支障がある場合等は神経ブロックや手術が行われます。

 日常生活では、良い姿勢を保つことや、パソコンやスマートフォンを長時間使い過ぎないことも、予防や悪化防止のためには大切なことです。

 漢方では、関節や筋肉にしびれや痛み、運動障害などが生じる証を、痺証(ひしょう)と呼びます。風寒湿邪などの病邪によって経絡が塞がれて閉じ、気血の流れが妨げられ、筋肉や関節に疼痛やしびれが表れます。頸椎症は、痺証の1つの疾患です。痺証は、基本的に気血が不足して経絡が空虚になっている時に生じやすい証です。

 従って、漢方では気血の流れを調え、痺証を治療することにより、頸椎症を改善していきます。

 痛みが移動性で、あちらこちらと移動しやすい場合(遊走性)は、「行痺(こうひ)」証です。風邪(ふうじゃ)による痺証です。風邪が経絡を侵すため、関節の疼痛、しびれ、運動障害などの症状は多発性で、その部位は遊走し、固定しません(これらは風邪の特徴です)。行痺のことを風痺(ふうひ)とも呼びます。風邪を除去する漢方薬で、頸椎症の治療を進めます。

 首や肩、関節が重だるく、痛みやしびれが生じている部位がいつも同じ(固定性)なら、「着痺(ちゃくひ)」証です。湿邪による痺証です。湿邪が盛んなため、重く滞り停滞しやすく、固定性で重だるい痛みを呈します(これらは湿邪の特徴です)。関節の運動障害、こわばりといった動かしにくさも生じます。低気圧の接近等で症状が悪化します。朝起きた時等、動き始める時に痛むのも特徴です。着痺のことを湿痺(しっぴ)ともいいます。湿邪を除去する漢方薬で、頸椎症を治します。

 強い固定性の痛みがあり、特に冷えた環境などで痛みが悪化するなら、「痛痺(つうひ)」証です。寒邪が侵入することにより生じる痺証です。寒邪は気血を凝滞させやすいため、固定性の激しい疼痛が生じます。痛みは、寒い日や冷房の効いた場所などで冷えると強くなり、入浴するなど温めると楽になります(これらは寒邪の特徴です)。痛痺のことを寒痺(かんぴ)とも呼びます。寒邪を除去する漢方薬で、頸椎症の治療を進めます。

 患部に熱感や発赤があるようなら、「熱痺(ねっぴ)」証です。熱邪による痺証です。熱邪が強いため、発赤や熱感などの熱証が表れます。症状は冷やすと軽減します(これらは熱邪の特徴です)。熱邪を除去する漢方薬で、頸椎症を治療します。

 血流の悪化により疼痛が生じている場合は、「血瘀(けつお)」証です。血瘀は、血の流れが鬱滞しやすい体質です。中医学に「不通則痛(ふつうそくつう)」という原則があり、「通じざれば、すなわち痛む」と読みます。体内での気・血・津液の流れがスムーズでないと痛みが生じる、という意味です。血瘀による疼痛は、この「不通則痛」で生じる痛みです。血の流れを促進する漢方薬で血瘀を除去し、頸椎症の治療をします。

 

続く