なぜ、核兵器はなくならず世界中で拡散し続けるのか?
はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
核兵器をめぐる今の一番の問題は、核使用についての予測不可能性が高まっていることです。
1945年に広島と長崎で原爆が投下されて以来、人類は核の恐怖にさいなまれてきました。冷戦期の一番のリスクは、米ソの対立が深まり、核戦争に突入することでした。米ソは人類を何回も死滅させられるだけの核を保有していましたから、その全面使用は世界の終わりを意味しました。
米ソ以外にイギリスやフランス、中国も核兵器を保有していたものの、核をめぐる当時の主要国は、あくまでも
米ソでした。ところが今は違います。
今はインド、パキスタン、北朝鮮が核兵器の保有を宣言し、イスラエルも保有国とみなされています。核保有国が増えるほど、偶発的な核使用のリスクは高まります。しかもこれらの国は、いずれも周辺国との関係が不安定です。他
国から攻められないための抑止力とし
て核を保有していると考えられますが、
情勢の悪化によっては、いつ核を使用しないとも限りません。
また近年はテロ組織による核兵器の使用や、核施設への攻撃も不安視されています
つまり今の時代は、核兵器をいかに減らし、廃絶するかと同時に、今ある核をどう管理していくかが大きな課題となっています。
なぜ人類は、核を手放すことができないのでしょうか
2017年~2018年
核兵器禁止条約の採択に揃って反対した核保有国2017年7月、国連で賛成多数により、核兵器禁止条約が採択されました。
核兵器の開発、保有、使用、威嚇などを禁じたこの条約は、50カ国が批
准手続きを終えると発効されます。
しかし核兵器禁止条約の採択は、核廃絶の困難さをむしろ印象づけるものとなりました。
核保有国および、日本や韓国、ドイツのような核保有国の核の傘の下で自国が守られている国々が揃って条約に反対し、交渉にすら参加
しなかったからです。条約が発効されても不参加国には効力が発生しないため、実効性は乏しいと思われます。
現在のNPT(核拡散防止条約)体制では、1967年時点ですでに核を保有していた米露英仏中の5大国の核保有を認める一方で、その他の国の保
有は認めていません。
今回明らかになったのは、5大国は、他国が核を保有することは認めないが、自分たちが
核を持ち続ける権利については、けっして手放そうとしないことでした。
逆にアメリカのトランプ政権は、核廃絶どころか、核の近代化を進めています。8年に発表された「核戦力体制の見直し」では、爆発力を抑えた小型核兵器の開発が盛り込まれました。現状の核兵器は威力が大きすぎて使いにくいので、敵の基地をピンポイントで
攻撃しやすいように、小型核兵器を開
発して原子力潜水艦などに搭載しよう
というわけです。
さらにトランプは昭年10月、冷戦期
にソ連と結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を表明しました。
再び核軍拡競争が起きかねない情勢に
なっています。
NPT(核拡散防止条約)1970年に発効された、米·英·露·中·仏の5ヵ国に核兵器の保有を認め、それ以外の国に核兵器の製造·取得を禁じる(不拡散とする)条約のこと。