膵臓全摘後の薬物治療の考え方は?クイズ
術後の薬物治療として適切と考えられるものを全て選べ。
(1)二相性イソフェンインスリン ヒト(遺伝子組換え[商品名ヒューマリン、ノボリン]):朝夕食前
(2)エキセナチド(バイエッタ、ビデュリオン):朝夕食前
(3)インスリンアスパルト(遺伝子組換え、[ノボラピッド、フィアスプ他]):朝昼夕食直前
インスリングラルギン(遺伝子組換え、[ランタス他]):就寝前
(4)大量のウルソデオキシコール酸(ウルソ他):朝昼夕食直前
(5)ガベキサートメシル酸塩注射薬(エフオーワイ他):夕食後
(6)大量のパンクレアチン:朝昼夕食直後
適切な内容は、
(3)インスリンアスパルト(遺伝子組換え、[ノボラピッド、フィアスプ他]):朝昼夕食直前
インスリングラルギン(遺伝子組換え、[ランタス他]):就寝前
(6)大量のパンクレアチン(朝昼夕食直後)
【解説】
膵臓の全摘後ですから、膵臓の内分泌と外分泌を根本的に補う必要があることは容易に分かります。内分泌は、消化酵素分泌、外分泌としては血糖値をコントロールするインスリンとグルカゴンですが、インスリンは重要ですよね。基本的には正常な膵臓のインスリン分泌状態を保つ必要がありますので、インスリンの強化療法(超速効あるいは速効型による追加分泌補充(食事に合わせた計3回)と寝る前の基礎分泌補充(持効型)を行うことが適当です。内分泌は消化酵素の補充として大量の消化酵素薬の投与が望まれます。
(1)誤:二相性イソフェンインスリン ヒト(遺伝子組換え)は、速効型水溶性インスリンと中間型イソフェンインスリンの混合製剤であり、正常のインスリン分泌状況を補えません。
(2)誤:エキセナチドは、GLP-1受容体を介して作用することによりグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進させる薬剤であり、2型糖尿病への適応です。
(3)正:超速効型のインスリンアスパルトの朝昼夕食直前投与と持効型のインスリングラルギンの就寝前投与は、インスリン強化療法です。
(4)誤:ウルソデオキシコール酸は、利胆作用による肝機能の改善や小腸切除後遺症、炎症性小腸疾患での消化不良に用います。
(5)誤:ガベキサートメシル酸塩は、急性膵炎、慢性再発性膵炎の急性増悪期などに用いられる蛋白分解酵素阻害薬です。
(6)正:パンクレアチンは、消化酵素製剤で多くの酵素を含有し、蛋白質、炭水化物および脂肪の消化をします。
人体の各臓器の機能を理解しておけばさほど難しくない問題です。病気や手術により臓器の機能が低下あるいは失われた場合、薬物で補充しなければなりません。薬物治療を考えるときの基本です。