柳沢吉保は江戸城のcGMP-最近の心不全治療薬!?前
先日、バイエル薬品さんから「慢性心不全治療薬ベリキューボ(一般名ベルイシグアト)」を紹介されました。
「可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC;soluble guanylyl cyclase)を刺激→体内の環状グアノシン一リン酸(cGMP)濃度が上昇→主な作用は血管拡張→心不全よくなる」というクスリ。
cGMP増加を「経口薬で」というところが印象深いと感じました。
で、cGMPをちょっと復習してまとめてみました。
cGMPとは何か
グアノシン三リン酸(GTP)からグアニル酸シクラーゼによって作られるヌクレオチドです。
医療系学校の生化学や生理学では「必ず試験に出る」
2つの合成パターンがあります。
・心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)などのペプチドホルモン→膜結合性グアニル酸シクラーゼ→cGMP
・一酸化窒素→可溶性グアニル酸シクラーゼ→cGMP
cGMPがやっていること
細胞表面に到達した、蛋白質合成を促す「蛋白質などの刺激(リガンド)」を「細胞質や核内に伝達する」のが役目です。
細胞内情報伝達の「セカンド・メッセンジャー」の1つ。
他のセカンド・メッセンジャー
cGMPや環状アデノシン一リン酸(cAMP)の他に、イノシトール三リン酸やジアシルグリセロールもシブい仕事をしているらしい。
正直、どこがシブいのかよく分からないけど。
カルシウムイオンも有名なセカンド・メッセンジャーであります。
セカンド・メッセンジャーは連絡係
セカンド・メッセンジャーは情報伝達系の連絡係。
なぜセカンド・メッセンジャーは1つじゃダメなのか?
英国の伯爵家には執事。
江戸城なら御側用人。
テレビ局にはアシスタントディレクター。
発生学的な深遠な事情はともあれ、「その場にピッタリくる」連絡係が必要なのかもしれません。
「側用人より奏者番の方がcGMPやcAMPに近いのではないか」というご意見もあるかもしれませんが、ここは「柳沢吉保は江戸城のcGMP」と呼ばせてください。
何が環状か
cGMPもcAMPも環状ヌクレオチドと呼ばれているので、「東京オリンピックのロゴ」みたいに全体がリングかと思っていました。
しかし、端っこが「輪っか」になっただけ。
リン酸基2個を手放した後、「居残りリン酸基」と「五角形」側の空いている手をつなぎたくなったのでしょうか。謎ですが。
cGMPの一生
グアニル酸シクラーゼにより合成され、役目を果たせば、ホスホジエステラーゼ(PDE)により分解され消えていきます。
正確な寿命は知らないけれど、「よどみに浮かぶうたかた」であるかと思います。