柳沢吉保は江戸城のcGMP-最近の心不全治療薬!?続き
利尿ペプチドで血中cGMP濃度は増えるか
利尿ペプチドを外から投与すれば、しばらくは生体のcGMPは増えるはず。
ですが、「血中のcGMP濃度上昇を検出できるか否か」は確信がなかったので、動物実験で試しに測ってみたら、上がっていました
どの程度の上昇したのかは、論文本文を見ていないので分かりませんが。
荷物が増えるので、去年「論文別刷り」が入った段ボールは全部捨てました。
cGMPモドキを投与してみた
昔、利尿ペプチドがcGMP合成を介して効果を発現するなら、「cGMPそのものの投与もあるんじゃないの」と考えました。
その時の医局の先輩に尋ねたら、「8-ブロモ-cGMP」というアナログを教えていただきました。
動物実験でその「8-ブロモ-cGMP」を使ってみたら、電気生理学的作用はANP静注時に近似していました。
植物もcGMPか
植物におけるcGMP合成には、動物と似た酵素や経路はありません。複数の蛋白質が協力してcGMPを作っているのかもしれないですが。
最近の心不全治療薬-その1
イバブラジン塩酸塩(コララン)
この数年、いくつか新規の経口心不全治療薬が現れています。
イバブラジンは、心拍数だけを減らす「洞結節の過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネル阻害薬」。聞き流すと、何のことかチンプンカンプンです。
心を落ち着けて見直すと、「過分極活性化→自動能」、「環状ヌクレオチド依存性→cGMPやcAMPに影響される」というわけで、そのマンマの性質を持っております。
だから、イバブラジンはcGMPと「縁もゆかりも」あります。
最近の心不全治療薬-その2
サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(エンレスト)
サクビトリルバルサルタンは、「ネプリライシン阻害薬のサクビトリル」と「アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のバルサルタン」がくっついています。
ネプリライシンは、「自民党をぶっ壊す」と言った小泉さんを上回る「やたらとぶっ壊しまくる分解酵素」(笑)
ANP、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などの利尿ペプチドだけでなく、ブラジキニン、エンドセリンⅠなどの血管拡張物質も分解します。
さらに、血管収縮を促すアンジオテンシンIIまで分解するので、「君は受験に専念したいのか、甲子園を目指すのか」と担任に諭されるタイプの生徒です。
そういう「敵も味方もあったもんじゃないネプリライシン」なれば、ネプリライシン阻害薬だけでは「イマイチ受験勉強の成果が上がらない」。
だから、ARBによって「野球道具を取り上げ」て勉強に専念してもらおうというのが、サクビトリルバルサルタンの意図するところです。
ともあれ、ネプリライシン阻害によりANPやBNPの分解を低下させれば、cGMPの活躍度は上昇する。
最近の心不全治療薬-その3
ベルイシグアト(ベリキューボ)
「一酸化窒素の産生能低下および可溶性グアニル酸シクラーゼ活性低下が、心筋や血管の機能不全の原因と考えられ、心不全との関連が示されています」とバイエル薬品のニュースリリースに書いてありました。
常識かもしれませんが、この視点は知りませんでした。
ベルイシグアトは、細胞内cGMPの産生レベルを高めます。
VICTORIA試験では「心血管死+心不全による入院」を10%減らしていました
オリンピックの走り高跳びで10%記録を伸ばすのは難しいですよね。
改善幅は小さくても、有意差を示したら大したものです。
というわけで、最近の経口の心不全治療薬の3つはどれもcGMPが絡んでいました。
以上、cGMPのおさらいはおしまい。おしまい。