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あしたへ向かって

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裁判でカルテ改ざんが認定、問題とされた記載

今年5月、眼科手術に関するカルテの改ざんについて、裁判所が病院側の賠償責任を認めた事例が報じられました。

 

 

カルテの改ざんが許されないのは当たり前ですが、そもそもカルテの改ざんとはどのようなケースが該当するのか。また、カルテの改ざんをすると、医療訴訟でどのように扱われるのか。3つの裁判例を基に見ていくことにしましょう。
【事例1】他の記録と整合せず、記載が不自然
 まずご紹介するのは、冒頭の方にて紹介した眼科の事例です。A医師は、両眼白内障の患者に対し、まず、右眼の白内障手術を実施。その後、左眼にも白内障の手術を実施しようとしましたが、チン小帯の断裂があったため、眼内レンズを挿入できませんでした。そこで、後日改めて、眼内レンズ挿入術と硝子体茎離断術を実施しましたが、その術後、左眼は光覚弁なしの状態が残存しました。

 この事案について、東京地裁令和3年4月30日判決は、次の通り判断しました。

 まず、カルテ記載のうち、

(1)右眼のチン小帯が少し弱いため、左眼手術の際に注意が必要である、

(2)水晶体を支えるチン小帯が弱いので手術としては難しかった、左眼はもっと手術が難しいと思われ、その旨説明したなど──といった記載について、カルテの改ざんがあったとしました。

 そのように判断した理由は、これらの記載が手術記録の記載内容と整合しておらず、また、記載が不自然だから、というものでした。「記載が不自然」というのは、他の記載をした後に右上方に挿入されるような形で記載されていたり、検査用紙の上に記載されていたりしたことを指します。

 その上で、裁判所は、医師は患者に対して、適正な医療を提供するため、診療記録を正確な内容に保つべきであり、診療記録に作成者の事実認識と異なる加除訂正、追記等を意図的にすることは、カルテの改ざんに該当し、患者に対する不法行為を構成すると指摘。カルテ改ざんについての慰謝料として100万円の賠償責任があるとしました。

 さらに、手術の危険性に関する術前説明については、上記(2)の通りカルテの改ざんがあり、そうすると、本件手術の危険性について説明した事実のカルテ記載上の裏付けがないことなどを指摘。術前説明に不足があったとし、説明義務違反を認めましたね。そして、説明を適切に行っていれば、患者はこの手術を受けることはなかったとして、前記100万円を含め、約960万円の賠償を命じました。

 この事例では、改ざんとは、「意図的に診療記録に作成者の事実認識と異なる加除訂正、追記等をすること」をいうとされています。そして、改ざんが認められた場合には、不法行為に該当し、慰謝料が発生し得ることを認めています。

 さらに、カルテの改ざんが説明に関する記載であった場合には、説明した事実について裏付けがなくなるので、他に証拠がなければ、説明義務違反にもなり得ることになり、これに基づく賠償責任も認めています。

次は
【事例2】電子カルテの設定などが根拠に
 B医師は、うつ病の患者に対し外来で抗うつ薬等の処方をしていましたが、患者は抗うつ薬を過量服用。その際には、一命をとりとめましたが、再び過量服用し、薬物中毒により死亡しました。

 この事案について、大阪地裁平成24年3月30日判決は、次の通り判断しました。

 まず初め、電子カルテの記載のうち、患者が最初に過量服用した後の受診時に、B医師が患者や夫に対し、(1)大量服薬の危険性について説明し、(2)大量服薬について厳重に注意し、(3)大量服薬を行うのであれば薬剤の処方を中止する等と告げ、(4)夫に対し薬の管理の徹底を指導し、夫がこれを了承した──旨の記載については、カルテを改ざんしたものであるとしました。

 そのように判断した根拠として、裁判所は、上記カルテの一部が、患者の死後、B医師によって書き換えられていたこと、電子カルテでありながら、書き換えた際に書き換え前の記載が保存されない設定になっていたこと、上記カルテについては、いずれもB医師が、新たにカルテのデータを保存することになる「登録」キーをカルテ開示請求後にクリックしていることなどを挙げています。

 裁判所は、B医師は、患者が過量服用をした事実を告げられながら、患者や夫に対して薬剤の管理について特段の指導や注意も行わずに、抗うつ薬を処方し続けたことになることを指摘。このような対応は適切ということはできないが、直ちに法的に注意義務に違反したとまではいえないとしました。

 一方で、患者が過量服用した場合には、医療機関の診療時間でなければ119番通報することも含めて直ちに医療機関を受診するように夫に対して指導すべき注意義務があったというべきであり、これに違反した注意義務違反があると指摘。このような指導をしていれば、2回目の過量服薬を認識した時点で、夫は直ちに119番に通報して患者を医療機関に受診させることができ、服薬後短時間のうちに胃洗浄や活性炭投与により救命できたと考えられるとして、約8600万円の賠償を命じました。

 

もともと医薬分業は、片方に権利、権力を与えすぎると、この様に、改ざん好き勝手な医療になってしまう危機から日本は医薬分業としています。薬剤師は見張り役ですが、上で書いたように裁判にまでなってしまうクセのある医者もいるのも事実ですが。f:id:syrup_97:20211013063831j:image