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あしたへ向かって

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世界初の抗体医薬の花粉症治療薬について解説しています3

実のところ、ゾレアの適応拡大に当たっては、薬価そのものを引き下げることも議論されている。ノバルティスファーマスイス・バーゼルに本拠地を置く、国際的な製薬・バイオテクノロジー企業は当初、効能追加の承認を留保していた。留保というのは、国際法における制度で、国が特定の規定に関して自国についての適用を排除・変更する目的をもって行われる一方的宣言のことだが、その理由を、「ゾレアを適正に使用いただくためには、医療関係者に『最適使用推進ガイドライン』の内容を良く理解してもらう必要がある。その準備をするため」とノバルティスファーマは説明している。しかし、「効能追加承認をメーカーが留保していたのは、薬価の面で折り合えていなかったため」ではないかとも考えるところである。

 現在、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会では、主たる効能・効果の変更がなされた医薬品の薬価を改定する「効能変化再算定」を、季節性アレルギー性鼻炎に適応拡大したゾレアにも当てはめようという議論がされていて、現行の効能変化再算定のルールでは、「主たる効能・効果」に変更があった医薬品の薬価を、既存の薬理作用類似薬の価格に近づけるよう算定することになっているが、ゾレアの適応拡大には、薬理作用が類似した既存薬がないのだ。

 そこで今回、このような薬理作用類似薬がない場合にも効能変化再算定を適用できるよう、ルールを変更することについて議論されている。再算定となれば反対の理由がないため、メーカー側としては効能追加承認を留保するという苦肉の策に出ざるを得なかった、というのが私の見解だ。結果的に効能追加を受け入れたことで、年明けには薬価再算定となるかどうかの決着がつくのではないかと推測しているところだ。