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日本のLong COVID、心障害の実態が明らかに

退院3カ月後の心障害疑いは31例、心筋浮腫10例、心筋炎8例

 

日本の循環器領域におけるLong COVID(COVID-19後遺症)の実態が明らかになった。

日本循環器学会などが取り組む「COVID-19関連心障害に関する調査研究」によると、中等症以上のCOVID-19患者において、退院3カ月後時点で心障害疑いは31例に認め、そのうち心筋浮腫が10例、心筋炎が8例だった。2022年3月30日に開催された第7回循環器病対策推進協議会で報告による。

 海外の複数の研究においてCOVID-19患者に心障害が生じていることが報告されているが、日本における心障害の頻度や実態については明らかでなかった。このため、日本循環器学会は、日本呼吸器学会や日本医学放射線学会とともに、多施設前向き観察研究である「COVID-19関連心障害に関する調査研究(TRACE-COVID)」に着手し、3月までに登録された31例について解析を行った。
 登録の包括基準は、日本呼吸器学会が主導する「COVID-19後遺症に関する実態調査(中等症以上対象)」の登録基準を満たし参加の同意が得られた患者で、以下の(1)(2)(3)のいずれかを満たす症例。

 (1)入院中もしくは退院3カ月フォローアップ時に一度でも高感度トロポニン陽性が確認されている。
 (2)入院時の値からの50%以上の上昇(入院時が測定感度以下の場合は測定感度濃度の150%の値以上)が、入院中もしくは退院3カ月後までに記録された高感度トロポニンで確認されている。
 (3)入院中もしくは退院3カ月後までに記録されたBNPもしくはNT-proBNPで、BNP≧100 pg/mLもしくはNT-proBNP≧300 pg/mLが記録されている。

 なお、(1)入院前までに冠動脈疾患または心不全の既往が指摘されている、(2)造影MRIを行うことが適さない患者(閉所恐怖症、MRI禁忌の体内金属植え込み後、高度腎機能障害[eGFR<30mL/min/1.73m2]、ガドリニウム造影剤に対する重篤な副作用の既往[アナフィラキシー反応]、妊婦)に該当する症例は除外された。

 上記の包括基準を満たし除外基準を満たさない患者に対して、退院3カ月後に心臓MRIと心エコーを行った。

 1次エンドポイントは、心臓MRIで(1)遅延造影MRIにおいて左室または右室心筋に造影効果を認める、(2)左心機能低下(LVEF<50%)または右心機能低下(RVEF<45%) 、(3)心膜の肥厚や造影効果の所見の3つのうちいずれかを認める心障害の有病率。

 2022年3月までに国内7施設から、中等症以上のCOVID-19感染者で上記のスクリーニング血液検査で心臓障害が疑われた31症例が登録された。なお、予定登録症例数は150例だったが、スクリーニングでの心臓障害が疑われた例が少なく、31例での解析となった。

 解析の結果、1次エンドポイントの心障害(上記のいずれかが陽性)は、31症例中13例(42%)に認められた。そのうち、左室異常造影効果(LGE)が26%、左室機能低下(LVEF<50%)が13%、右室機能低下(RVEF<45%)が19%に認められた。右室の異常造影効果(LGE)と心膜の肥厚や造影効果(LGE)は0%だった。

 この31症例中、心筋浮腫が10例(32%)、MRI上の心筋炎の定義に該当する症例が8例(26%)という。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引きの別冊「罹患後症状のマネジメント」(暫定版)では、後遺症の循環器症状へのアプローチの中で、以下の対応を求めている。Long COVIDの患者を診察する可能性を考えて、再確認しておくべきであろう。

 「罹患後症状を訴える患者の診療では、かかりつけ医等が問診と身体診察を行い、考えられる鑑別疾患に応じた検査を実施して、診断を試みる。診断がつけられず、循環器疾患が疑われる場合は、胸部X線写真・心電図における異常所見の有無を確認し、循環器専門医への紹介が望ましい。

なお、BNPもしくはNT-proBNPを測定し、BNP100 pg/mLもしくはNTproBNP 400 pg/mL以上の場合は速やかに循環器専門医へのコンサルテーションを勧める(失神を伴う場合はBNP・NT-proBNPの値を問わない)。

身体所見や胸部X線写真・心電図に異常所見がない場合や、かかりつけ医あるいは循環器専門医の判断で循環器疾患の関与はないと考えられる場合は、症状の改善まで1~3カ月ごとに経過観察を行う。

症状が持続している場合は、かかりつけ医等で評価し、必要に応じて循環器専門医に紹介する」。

第7回循環器病対策推進協議会 資料

参照