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あしたへ向かって

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PCR・抗原・抗体検査をどう使い分けるか

日本臨床微生物学会、日本感染症学会、日本環境感染学会の3学会は5月25日、新型コロナウイルス感染症COVID-19)に対するPCR検査、抗原検査、抗体検査の特徴と使い分けに関する指針「新型コロナウイルス感染症に対する検査の考え方」を公開した。

 指針では、外来患者に対して、医師が検査を必要と判断した場合にいずれかの検査を行うとしており、検査の適応とその後の流れをフローチャートとして示している(図1)。これまではPCR検査を中心とする遺伝子検査が広く行われ、陽性・陰性の確定診断に用いられてきた。遺伝子検査は感度が高い一方、検査時間が長い、専用の機器と検査に習熟した人材が必要、コストが高い、鼻咽頭ぬぐい液の採取時における感染に注意が必要──といった課題がある。

 5月13日にCOVID-19に対する国内初の抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」が承認・保険収載された(関連記事:コロナ抗原検査が使用可能に、陽性のみ確定診断)。抗原検査は特別な機器が必要なく、外来で検体を採取してから約30分で陽性・陰性を判定できる。PCR検査と比較した陽性一致率は66.7%、陰性一致率は100%とされている。抗原検査は感度がやや劣るが、迅速性に優れ偽陽性が少ないという特徴を挙げ、陽性であればCOVID-19の確定診断が可能とするアルゴリズムを示した。この場合、入院措置もしくは宿泊施設・自宅待機での療養を指示する。

 一方、抗原検査で陰性の場合には感染を否定できない。この場合は経過観察や抗原検査の再検査となるが、陰性でもCOVID-19を強く疑う場合には、医師の判断でPCR検査の実施を考慮すると位置付けた。なお、抗原検査もPCR検査と同様、鼻咽頭ぬぐい液を検体とすることから、検体採取には十分な感染対策を行う必要がある。

 患者血液の特異抗体を検出する抗体検査は、PCR検査や抗原検査と比較すると、検体採取時の感染リスクが低いと考えられる。しかし、特異抗体の産生には通常、感染後2~3週間の期間が必要であり、感染・発症していても抗体検査で陽性にならない場合がある。ただし、COVID-19では感染から発症、受診まで2週間ほど経過している症例もあることから、こうした場合には抗体検査が診断に役立つとしている。

 抗体検査については、特別な機器を必要とせず、イムノクロマト法により迅速にIgM抗体またはIgG抗体を検出し、陽性・陰性を判定する定性検査キットが既に複数存在するが、指針では有用性に関して現在検討中としている。日本感染症学会は抗体検査キット4種の性能評価結果を公開しており、感度・特異度ともにキット間の性能の際が大きく、使用するキットによっては結果に大きく影響すると指摘している。

疫学調査に抗体検査を活用

 健常人を対象としたサーベイランスとして、感染の既往の疫学調査を行う場合には抗体検査が有用としている。現在、ELISA法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay; 酵素結合免疫吸着測定法)などを用いて抗体価を定量測定する検査法が開発されており、専用の機器が必要であるものの多数の検体を迅速に検査でき、感染の既往を示す抗体を保有しているかを把握できる。イムノクロマト法による定性の抗体検査は、感染初期に偽陰性を示す可能性が高い点が課題となる。

 抗体検査を基にした感染の蔓延状況を経時的、地域別に解析することにより、集団免疫の進行状況を把握することが可能になる。一方、現在進行中の感染の蔓延状況を把握するためのサーベイランスには、大規模集団を対象としたPCR検査などの遺伝子検査が最も信頼性が高い。ただし、検体採取の煩雑さや感染リスク、検査時間、コスト、マンパワーなどの観点から困難な場合が多いとしている。

PCR検査で院内感染のスクリーニング

 COVID-19患者の周囲で医療従事者などに新たな感染が見られた場合は、院内感染を疑い、感染した医療従事者の濃厚接触者を選別した上で、迅速にPCR検査など遺伝子検査によるスクリーニングを実施する。このスクリーニングにおいては、抗原検査は感度が低いため推奨しないと位置付けた。なお、濃厚接触の定義は、「原則として発症2日前から現在まで、マスクなしで15分以上、1メートル以内の距離で接触があった人」としているが、最終的には専門家の判断の下に濃厚接触者を抽出する。