にほんブログ村 教育ブログ 生涯学習・教育へ
にほんブログ村 http://pharmacist2.jugem.jp/ https://confessiondemasquepharmacist.wordpress.com/2021/01/10/

あしたへ向かって

トレンド、医療、政治、趣味について書いていきます

「空気感染」を誤解していませんか?

2020年7月6日、豪州、欧米、中国、日本などの研究者有志が、「It is Time to Address Airborne Transmission of COVID-19」と題した声明をClinical Infectious Disease誌に発表。

 

 

COVID-19のairborne transmission(空気媒介伝播)による感染(ここではこれを空気感染とする)に対応すべきと訴えた。具体的には、「公共施設やオフィススペース、学校、病院や老健施設などで十分で効果的な換気が行えるように設備を整えるべき」というものだ。この声明に対し、世界保健機関(WHO)は7月7日の定例会見で「換気の悪い環境でのairborne transmissionの可能性」について言及。これまでCOVID-19の感染様式は接触感染と飛沫感染としていたWHOも空気感染について初めて言及した形だ。この研究者有志による声明の背景などについて、有志の一人として加わった国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一氏に話を聞いた

 

従来の空気感染あるいはエアロゾル感染と非科学的造語「マイクロ飛沫感染
──最近、「マイクロ飛沫感染」という言葉も出てきました。

西村 従来の飛沫の定義を念頭に置けば「COVID-19は飛沫感染である」というだけでは説明が付かないことは明白です。そのために「マイクロ飛沫感染」とかいう言葉が作り出されたようです。学問の場でのコンセンサスなしに突然主要メディアを通して出てきて、なし崩し的に使われようとしています。しかし、従来の空気感染あるいはエアロゾル感染のかわりに、「マイクロ飛沫による感染」と言いかえているだけで、概念的に新しくも何ともない。これを言い出した人たちにお聞きしたい。「マイクロ飛沫感染」とはどのように定義されるものなのでしょうか。そこでの「飛沫」の定義は何であって、エアロゾルとどう違うのでしょうか。マイクロ飛沫感染エアロゾルによる空気感染とどう違うのでしょうか。なお、ご存じのようにエアロゾルの定義は「気体とその気体中に浮遊する固体もしくは液体の粒子」です

 

 

 

──とすると、airborneという言葉はどう受け止めればいいとお考えですか。

西村 その前に、冒頭で紹介した声明が発表された後、仲間内で議論になりました。メールでのやりとりでしたが、面白いし大事な議論なので紹介します。

 実はあの声明の中にもmicrodropletsという言葉が使われていて、「microdropletsによるairborne infection」という言葉の使い方をしています。microdropletsはそのまま訳すならばマイクロ飛沫となるかもしれませんが、声明の説明に即して訳すと「顕微鏡観察レベルの飛沫」といった感じになります。

 私は、署名当初はとにかく結束して空気感染を認知させることが第一と、その表現には目をつむりましたが、声明がジャーナルにacceptされた後、主要著者メンバーに「microdropletという言葉は誤解が多いのでやめないか」と提案しました。「我々には昔からdroplet(飛沫)とdroplet nuclei(飛沫核)という言葉があり、dropletのうち空中浮遊するものならびにこれまでの理解通り空中浮遊するdroplet nuclei がウイルスをairborneでtransmitさせると言えばいいのではないか」と考えたからです。

 これに対し、「dropletは径5μm以上の粒子で1~2m以内に落下するものという、実生活空間ではほぼ意味のない定義を信じて疑わない人たちが混乱する。その上、飛沫が乾いてできるdroplet nuclei(飛沫核)だけが空気感染を起こすと誤解している人たちも多いが、皆が知っている通り、それ以上の径でも空気感染を起こさないわけではない。だから、空気感染の定義に粒子の径や感染までの時間や距離の要素を入れるべきではない」と述べた人がいました。

 また別の人は「dropletとdroplet nucleiの区別も実際にははっきりしていないので、いっそdropletという言葉はやめて、エアロゾルのもともとの意味を尊重して空中に浮遊する粒子全てを含めたエアロゾルによる感染とすべき」と提案しました。そうしたら、「いっそのこと、落下する粒子と落下せず浮遊する粒子に分けたらどうか」という意見まで出てきました。「その落下の定義は、目で見えるものとしたらどうか」とまで言う人も現れ、それに対して、「目で見えるか見えないかは光の当たり方で簡単に変わるからだめ」とか

 エアゾルとは

気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子をエアロゾル(aerosol)といいます。エアロゾルは,その生成過程の違いから粉じん(dust)とかフューム(fume)、ミスト(mist)、ばいじん(smokedust)などと呼ばれ、また気象学的には、視程や色の違いなどから、霧(fog )、もや(mist )、煙霧(haze )、スモッグ(smog )などと呼ばれることもあります。エアロゾル粒子の性状は、粒径や化学組成、形状、光学的・電気的特性など多くの因子によって表され、きわめて複雑です。(中略)例えば粒径についていえば、分子やイオンとほぼ等しい0.001μm=1nm程度から花粉のような100μm程度まで約5桁にわたる広い範囲が対象となり(後略)」(※編集部注:「μm」はマイクロメートル、「nm」はナノメートル。0.001マイクロメートル=1ナノメートル=10億分の1メートル)

つまり、エアロゾルは、空気中に浮遊する、直径が0.001μmから100μmの粒子

続きます

 

 

コーヒープロフェッショナル