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保存期CKDの腎性貧血にも使用できるHIF-PH阻害薬、2剤発売

【新薬】バダデュスタット(バフセオ)/ダプロデュスタット(ダーブロック)のはなし

2020年8月26日、腎性貧血治療薬バダデュスタット(商品名バフセオ錠150mg、同錠300mg)およびダプロデュスタット(ダーブロック錠1mg、同錠2mg、同錠4mg、同錠6mg)が薬価収載と同時に発売された。6月29日に製造販売が承認されていた。適応は両剤ともに「腎性貧血」、バダデュスタットの用法用量は「1回300mgを開始用量とし、1日1回投与。患者の状態により適宜増減するが、最高用量は1日1回600mgまで」。ダプロデュスタットの用法用量は「保存期慢性腎臓病患者で赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合、1回2mgまたは4mgを開始用量とし、1日1回投与、最高1日1回24mgまで。赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合および透析患者の場合、1回4mgを開始用量とし、1日1回投与、最高1日1回24mgまで」となっている。
 腎性貧血は、慢性腎臓病(CKD)の早期から認められる代表的な合併症であり、腎での内因性エリスロポエチンEPO)産生が低下し、栄養低下、鉄欠乏、出血傾向、赤血球寿命短縮などと相まって引き起こされる。腎性貧血は末期腎不全への病態進行を早め、また心不全の独立した増悪因子であることから、早期発見・治療による生命予後の改善が期待されている。

 従来、腎性貧血の治療としては、エポエチンアルファ(エスポー他)などの赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の注製剤が中心的治療薬として使用されていたが、注射製剤であるため感染症リスクや患者の身体的負担が大きく、さらにESA投与によって抗EPO抗体陽性赤芽球癆が発現することが問題となっていた。

 2019年11月から、経口薬であるロキサデュスタット(エベレンゾ)が使用されているが、その適応は「透析施行中の腎性貧血」に限定されている。

 バダデュスタットおよびダプロデュスタットは、ロキサデュスタットと同じ低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬である。低酸素誘導因子(HIF)の調節酵素であるHIF-PHを阻害することで、転写因子であるHIF-αの分解を抑制してHIF-αを蓄積させ、HIF経路を活性化させる。その結果、生体が低酸素状態に曝露された際に生じる赤血球造血反応と同様に、正常酸素状態でも赤血球造血が刺激され、貧血が改善すると考えられている。

 今回発売されたバダデュスタットおよびダプロデュスタットは、透析期のみならず保存期CKD患者の腎性貧血にも使用可能であり、さらに、バダデュスタットは透析期および保存期でも同じ用法用量で投与可能となっている。

 保存期CKD患者、腹膜透析患者、ESA使用の血液透析患者、ESA未使用の血液透析患者をそれぞれ対象とした複数の国内第3相試験において両剤の有効性および安全性が確認された。

 副作用(臨床検査値異常を含む)として、バダデュスタットには高血圧、下痢、悪心など(各1%以上5%未満)が認められている。重大な副作用としては、脳梗塞(0.4%)やシャント閉塞(1.0%)などの血栓塞栓症(4.2%)が報告されており、肝機能障害を生じる可能性もある。ダプロデュスタットには、網膜出血、過敏症、高血圧(各1%未満)が認められているほか、重大な副作用として血栓塞栓症(0.8%)があらわれることがある。

 なお、ESA未使用の場合での投与開始の目安は、両剤ともに、保存期CKD患者および腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度11g/dL未満、血液透析患者では10g/dL未満となっている。

 

 

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