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あしたへ向かって

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日本で初めて祝手術支援ロボット

 

 

埼玉医科大学国際医療センターが日本で初めて導入した「センハンス・デジタル・ラパロスコピー・システム」は、「ダビンチ・サージカル・システム」(ダビンチ)に続く新たな手術支援ロボット。腹腔鏡の延長線上で、手振れなく安定的な手技を可能にするというコンセプトで開発された。患部に触れたときの触感を手元に伝える機能を搭載しているほか、部品を既存の腹腔鏡のものと兼用・再利用できるため、ランニングコストの軽減にも期待が寄せられている。


 
 現在、手術支援ロボットとして世界で圧倒的なシェアを占めているのは、米国のインテュイティブサージカルが開発した「ダビンチ・サージカル・システム」(ダビンチ)だ。既に国内でも数百台が導入されており、ロボット支援手術といえば「ダビンチ手術」を指すのが一般的だ。

 他方、2019年にダビンチ関連の特許が期限切れを迎え始めたこともあり、国内外で次世代の手術支援ロボットの開発が加速している。2020年8月には初の国産手術支援ロボット「hinotori」が製造販売承認を取得したが(関連記事)、それより前に、ダビンチに続く第2の手術支援ロボットが日本に上陸している。

 それが、米国のトランスエンテリックスが開発した「センハンス・デジタル・ラパロスコピー・システム」(センハンス)だ(写真1)。欧米各国で既に臨床使用されており、日本では埼玉医科大学国際医療センターが2018年5月に初めて導入した。


      センハンス・デジタル・ラパロスコピー・システムの全体像
手術室外に本体3台(アーム3本)と人体モデルを仮設置した状態で撮影。実際の手術時には4本のアームを使用可能。
 埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター消化器外科(下部消化管外科)教授の山口茂樹氏は、海外の術者の指導を受けながらセンハンスを用いた大腸癌手術を開始し、安全性などを検証。この結果を基に、センハンスは2019年5月に国内での承認を取得し、同年7月に保険適用された。同センターでは消化器外科領域を中心に、センハンスを用いた手術を2年余りで45例実施してきた。
「デジタル腹腔鏡」の強み
「センハンスは腹腔鏡と器具を兼用でき、ランニングコストを抑えられる」と語る埼玉医科大学国際医療センターの山口茂樹氏。
 ダビンチが操作も器具も腹腔鏡とは大きく異なるのに対して、「センハンス・デジタル・ラパロスコピー・システム」はその名称の通り、高機能な「デジタル腹腔鏡」とも呼べる機器で、既存の腹腔鏡手術の延長線上で手技を発展させることを目的としている。

 ダビンチによる手術を保険診療として行える術式は、ロボット支援手術として保険適用されている21術式に限られる(関連記事)。一方、センハンスは保険適用上の扱いとしてはあくまでも「腹腔鏡」であるため、腹腔鏡手術として収載されている術式であれば、いずれも保険診療として施行できる。埼玉医科大学国際医療センターでセンハンスを用いて行っている手術で最も症例数が多いのは、2020年時点でロボット支援手術が保険適用されていない結腸癌手術だ。また、ダビンチに課される施設基準は適用されず、腹腔鏡手術を実施できる施設であれば、術者がトレーニングを行えばセンハンスによる手術を行える。

 山口氏はセンハンスの特徴について、「腹腔鏡と器具を兼用でき、操作方法もほぼ同じながら、腹腔鏡よりも動作の自由度が高い。腹腔鏡では挿入角度や術者の体勢的に難しいアプローチでも手術を施行しやすい」と説明する。

 ダビンチは本体から4本のアームが伸びた構造をしており、術者がコンソール(操作卓)をのぞき込む形で操作する。先端の鉗子などはダビンチ専用の器具を用い、関節数が豊富なアームや専用鉗子によって腹腔鏡手術では非常に高難度な術式でも、精緻かつ安定的に手術を行えるのが強みだ(関連記事)。手元の操作や鉗子の挿入位置は腹腔鏡とは大きく異なるため、腹腔鏡手術とは別の操作訓練が必要だが、腹腔鏡に不慣れでもダビンチの操作は可能であることから、術式によっては腹腔鏡手術のスキル習得をスキップしてロボット支援手術のトレーニングを始めるケースもある(関連記事)。


 ダビンチXiサージカルシステム(提供:インテュイティブサージカル)
 一方のセンハンスは、アーム1本ごとに本体が独立しており、挿入位置に合わせて各本体を設置する。鉗子は再利用可能で、トロッカー(鉗子を体内に挿入するための細い管)は腹腔鏡手術と同じものを使用する(動画1)ため、「ランニングコストを抑えられる」と山口氏。また、太さ3mmや5mmの鉗子など、ダビンチの器具より細い鉗子も活用できる。ただし、現行の器具には先端部にダビンチのような関節がないため、人の手のように先端部を曲げたり回転させることはできない。海外では、先端の曲がる鉗子が使用され始めている。

 センハンスを操作するためには腹腔鏡の操作に習熟している必要があるが、患者の両側から鉗子を挿入するなど、通常の腹腔鏡では術者の姿勢上不可能なアプローチでも手術を行える。また、手を動かせる範囲以上に鉗子を動かしたい場合には、基準位置をリセットして無理のない動きで操作を続けることができる。ダビンチと同様、術者の手の動きと対応する鉗子の動きの速さを変更することも可能。

 

 

追伸 繊細な手技ではゆっくりした動きに切り替えて操作できるようです。