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あしたへ向かって

トレンド、医療、政治、趣味について書いていきます

勤務医よりも開業医の方が儲かるは本当か気になるはなし医療崩壊危機?って

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まずはこちらのシミュレーション(図1)をご覧ください。45歳で開業した医師と、定年まで勤務医を続けた医師の65歳までの預貯金額の推移をグラフ化したものです。皆さんはどんな印象をお持ちになるでしょうか。

😊

図1 45歳で開業と定年まで勤務医を比べた預貯金額のシミュレーション

 これは、今年3月末に発行した書籍『知らなきゃマズい 医師×お金のルールとマナー』の冒頭で示している図です。シミュレーションの詳しい前提条件は本書にあるので省略しますが、開業医も勤務医も50歳代後半まではほぼ同じような推移をたどっています。

 40~50歳代の働き盛りの間を見ると、どちらとも住宅ローンの返済と子どもの教育関連の支出が重なり、家計はそれほど余裕がありません。勤務医は最後に退職金をもらって一気に預貯金額が増えます。この4000万円という額は「ずっと病院に勤め上げた人」の実例を基にしていますので「それほどもらえない」という人もいるでしょう。一方、開業医も私立大医学部に入った子どもが巣立ち、開業時の借金を完済した60歳以降になって家計の収支が一気に上向きます。最終的には勤務医より4000万円ほど多い預貯金額になっています。

シミュレーションの限界は「リスクを明示できないこと」

 さて、このシミュレーション、皆さんは違和感なく受け入れられるでしょうか? 書籍の編集担当だった私の正直な気持ちを言えば、書籍を校了させた3月頭の時点では内容に納得していました。それこそ、住宅ローンの利率や税金、子どもの学費なども最新の情報を反映し、精緻に作ったグラフですので、よくできているようですが

 6月下旬の今、改めて見ると違和感がどうしてもあります。恐らく、皆さんも同じでしょう。この感覚は、「開業医がそんなに安定しているわけない」という一言にまとめられるでしょうか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって外来患者が減り、診療科にもよりますが多くの開業医が収入の大幅な減少に直面しました(参考:53.4%が「患者減」、大打撃を受けた診療科は?)。「経営が厳しくて、借入金の返済が厳しい」という声も耳にします。

 ただ、これがシミュレーションの限界であることも事実です。基本的にこうしたシミュレーションを作成するときには、例えば自然災害で診療できなくなるといった“万が一、起きてしまうようなこと”は考慮しません。「順調に経営できた場合は……」という想定しかできないのです。順調に経営できれば開業医の方が勤務医よりも預貯金額は増えます。けど、それはリスクを背負う「ハイリスク・ハイリターン」の行動を取っているからなのです。このリスクはシミュレーションには盛り込むことができません。

 この考え方、金融用語でいう「リスクプレミアム」の考え方に通じるところがあります。編集担当として「書籍に入れておいてよかった」と思ったのは、この“違和感グラフ”からページを2枚めくった先にあるコラム「『リスクプレミアム』の視点を持とう」です。本書はタイトルにあるように医師が知っておきたいマネーリテラシーがテーマですが、「投資」「貯蓄」「保険」「借金」などのお金について語る上で、無視できないのがリスクに関する考え方です。なのでこのコラムも書籍の最初の方に置いているわけですが、まさかこんなにすぐに大きなリスクが訪れるとは……。

 コラムを以下にほぼそのまま転載します。本書の雰囲気を感じ取っていただければ幸いです。

「リスクプレミアム」の視点を持とう(本書15ページから)

 何か物事を比較して、「お得な方を選びたい」と考えるのは当然のことでしょう。そのとき、忘れてはならないのがリスクプレミアムの視点です。

 まずは、簡単な心理実験から。次の提案のうち、あなたはどちらを受け入れますか。

<提案1> 「1000円あげます
<提案2> 「サイコロを振って4以上が出たら2000円あげます。3以下だったら何もあげません

 期待値はどちらも1000円。ですが、認知心理学者の実験によって、多くの人は提案1の「1000円を確実にもらえる」方を選ぶことが分かっています。これを「プロスペクト理論」(Kahneman&Tversky,1979)と呼びます。リターンを得られると期待する場面では、人はリスク回避的になるのです。

 なお、このプロスペクト理論では、損失を覚悟している場面においては、逆に人はリスク志向的になるとも述べています。1000円を支払わないといけない場面では、人はおとなしく払うよりも、2分の1の確率で「2000円払う」か「チャラ」になるかを賭ける方を選ぶのです(居酒屋でよくある「勝てば無料、負ければメガサイズ」の“じゃんけんハイボール”は、この心理を応用した販売促進策です)。

 「リスクプレミアム」というのは、プロスペクト理論を反映した金融用語で、「リスクのある資産の期待収益率から、無リスク資産の収益率を引いた差」のことを表します。ここでいうリスクというのは、「危険性」というより「不確実性」と訳した方が正確でしょう。

リスクプレミアム=(リスク資産の期待収益率-無リスク資産の収益率)

 例えば、保有することで確実に利益が得られる国債の期待リターンを年0.1%とします(本当はもっと低いのですが)。一方、価格変動のある株式の期待リターンも年0.1%で一緒だったら、皆さんは国債と株式、どちらに投資するでしょうか。株式の方は利回りが年0.1%より高くなって、期待以上にもうかることもあれば、元本割れすることもある投資商品です。先ほどの心理実験と同じですね。誰もが無リスク資産の国債を選び、確実に利益を確保したいと思うはずです。

 一般的に、株式投資は期待収益率3~6%といわれます。ここから国債の0.1%を引いた収益率2.9~5.9%がリスクプレミアムです。株の暴落で損するかもしれないという不確実性を受け入れた上でこのプレミアムを享受できるのです。あらゆる金融資産は、まず無リスク資産の収益率が土台にあり、その上に各金融資産固有の価格変動リスクに対応したリスクプレミアムが上乗せされた収益率になっていると考えることができます。

 単純化すれば、ハイリスクの金融商品とローリスクの金融商品があった場合、ハイリスクな方がハイリターン(期待利回りが高い)でないと、商品として成り立たないということです。実際に新興国の株式や社債など、ハイリスクな金融商品は期待利回りが高いもの。新興国通貨の利息が高いのも同じ理屈で説明できます。

 なお、この考えを応用すれば、「ローリスク・ハイリターン」をうたう商品というのが、“眉唾もの”であることが分かります。そんなものが存在したら、市場のバランスが崩れ、他の金融商品が売れなくなります。こうした話は、はなから疑ってかかった方がよいでしょう。

 では、様々な種類の金融商品やタイミングを変えながら投資する「分散投資」はどうでしょうか。分散するやり方にもよりますが、価格変動リスクを下げている場合は、大きなリターンを得られる可能性も低くなっているので、やはり「ローリスク・ローリターン」の投資をしているということになるのです(それでも定期預金などの無リスク資産に比べたら十分にハイリスク・ハイリターンです)。

 このリスクプレミアムの考え方は、投資だけでなく、お金にまつわる意思決定の際に常に持っておきたいものです。

 例えば「開業医 vs 勤務医」は、一般的な事例をシミュレーションして比較すると、どうしても開業医の方が高収入になります。ですが、これは開業医の方が「経営が失敗して借金を背負う」という高いリスクを背負っているからです。結果的に開業医の方が勤務医より平均収入が高いとしても、それはリスクプレミアムが上乗せされているから。シミュレーションだけを見て、「開業医の方がお得」とは単純には言えません。

 よくある「持ち家 vs 賃貸住宅」の議論も同様です。シミュレーションをしてみると多くの場合、持ち家の方が資産の面で「お得」という計算になるのです。でも、家を購入することで発生する様々なリスクを考えると、総合的にはいい勝負になっているはずです。

 シミュレーションは全体像を把握する上で参考になるのですが、単純にお金の部分だけを比較すると本質を見誤ることになります。「お得」の裏にあるリスクも常に意識するようにしましょう。

 長くなりましたが、要するに「お得に見えることの裏にはリスクがある」ということです。開業だって、資金調達の際に銀行に提出する「事業計画」では必ずもうかるシミュレーションを立てているはずなのですが、院長自身が事業計画を信じ込んでしまうのではなく、その裏のリスクを認識して備えておくことが大切なのです。

 一方で、金融投資について考えると、ある程度のリスクを冒さないとお金は増えません。そこで、自分が持っている資金の中で「生活資金」「余裕資金」を可視化し、余裕資金の範囲内でリスクを取る方法を3章の「銀行口座の利用法」の中で紹介しています。ニュースを見ると、いわゆる「ネット銀行」の口座開設が最近、急増しているらしいですね。この資金の可視化には、ネット銀行が欠かせなかったりしますので、ぜひご覧ください。これで、生活資金を先物取引などに突っ込む人が1人でも減ってくれれば……と思っています(今回のコロナ禍で原油先物がマイナス価格になって青ざめた人! 本書162ページのコラム「『レバレッジ』の怖さの正体」を読んでください)。

 本書ではこのような形でお金とリスクの関係に触れながら、1章で医師ならではのライフプランとマネープランについて、2章で本サイトで連載中のマネーコラムDr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」の最新リライト版、3章で医師のための「銀行の利用法」「入るべき保険、入るべきでない保険」「税金」の話、4章で「医師を狙う詐欺」から身を守るための方法をまとめています。巻末付録の「医師を狙うダマしの手口 26連発」も必読です。

 COVID-19の影響で、将来のお金に対して不安を覚えたかたも増えたのではないかと思います。改めて本書でご自身の「お金に対する考え方」を整理してみてはいかがでしょうか。

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