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【新薬】ジヌツキシマブ(ユニツキシン)

【新薬】ジヌツキシマブ(ユニツキシン)

 

神経芽腫に対する新たなモノクローナル抗体

 

2021年9月22日、抗悪性腫瘍薬ジヌツキシマブ(遺伝子組換え)(商品名ユニツキシン点滴静注17.5mg/5mL)が発売された。本薬は6月23日に製造販売が承認、8月12日に薬価収載されていた。適応は「大量化学療法後の神経芽腫」、用法用量は「フィルグラスチム(遺伝子組換え)及びテセロイキン(遺伝子組換え)との併用において、1日1回17.5mg/m2(体表面積)を10~20時間かけて点滴静注。

28日間を1サイクルとし、1、3、5サイクルは4~7日目、2、4、6サイクルは8~11日目に投与する」となっている。

 神経芽腫は、小児固形腫瘍で胎児期の神経堤細胞を起源とする細胞が癌化したもので、小児癌の中では白血病、脳腫瘍に次いで多く見られる腫瘍である。症状がないまま進行することが多く、転移を起こした後に、目の腫れ、手足の痛み、貧血および青あざなどの症状をきっかけに発見される。神経芽腫は、臨床病期、年齢、MYCN遺伝子増幅の有無、国際病理分類および腫瘍細胞内の染色体数の5つの予後因子を用いて低・中間・高の3つのリスク群に分類され、低~中間リスク群の治癒率は9割を超えるものの、高リスク群に分類された患者の5年生存率は5割以下であり予後不良である。

 治療法としては低~中間リスク群では無治療での経過観察あるいは化学療法や腫瘍の摘出術が行われ、高リスク群では寛解導入療法、自家造血細胞移植を伴うCEM療法(カルボプラチン[CBDCA;パラプラチン他]+エトポシド[ETP;ベプシドラステット他]+メルファラン[MEL;アルケラン])などの大量化学療法、状態に応じた放射線療法または切除術などが行われる。しかし、現時点では高リスク群患者が一般的な初回治療後に再発または増悪した場合の予後は不良であり、標準的な治療は確立していない。

 ジヌツキシマブ(DIN)は、ジシアロガングリオシド(GC)2を標的としたマウス抗GD2モノクローナル抗体の可変部およびヒトIgG1の定常部から構成される分子量約15万の糖蛋白質の遺伝子組換えキメラ型モノクローナル抗体である。本薬は、神経芽腫細胞などの細胞膜上に発現するGC2に結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)作用および補体依存性細胞傷害(CDC)活性により、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。また、フィルグラスチム(遺伝子組換え)(グラン他)およびテセロイキン(遺伝子組換え)(イムネース)と本薬を併用することでADCCエフェクター細胞である好中球やナチュラルキラー(NK)細胞などを活性化し、本薬によるADCC活性が増強するとされている。

 初回診断時に31歳未満の大量化学療法を含む集学的治療施行後に疾患進行が認められない高リスク群神経芽腫患者を対象とした国内第IIb相試験(GD2-PII試験)にて、本薬+フィルグラスチム+テセロイキン(DIN/FIL/TEC)併用投与群と米国レジメン群(本薬+GM-CSF製剤[sargramostim]+インターロイキン-2(IL-2)製剤[aldesleukin、isotretinoin])併用投与群の有効性および安全性を検討する非盲検無作為化比較試験が実施され、本薬の有効性および安全性が確認。

海外では、2021年3月現在、米国とカナダで承認されており、日本では2020年8月に希少疾病用医薬品に指定されている。
 ※国内未承認

 主な副作用 として、便秘、下痢、顔面浮腫、倦怠感、低アルブミン血症、食欲減退、ALT増加、AST増加、GGT増加、血中尿素増加(各50%以上)などがあり、重大なものは、発熱・嘔吐・咳嗽・蕁麻疹・過敏症・悪心等を含むinfusion reaction(100%)、骨髄抑制(93.8%)、疼痛 (81.3%)、電解質異常(75.0%)、感染症(43.8%)、眼障害(37.5%)、低血圧(12.5%)が報告されており、毛細血管漏出症候群の可能性があるので十分注意する必要がある。

 なお、薬剤使用に際しては、下記の事項5つについても留意しておかなければならない。

●本薬は0.875mg/m2/時で点滴静注を開始し、患者の忍容性が良好な場合、投与開始20~40分以降は1.75mg/m2/時とする。また、副作用のため減速した場合は、最大20時間で投与終了とすること

●投与による疼痛を軽減させるため、本薬投与前から投与2時間後まで、オピオイド鎮痛薬を投与すること

●投与によるinfusion reactionを軽減させるために、本薬投与前に、抗ヒスタミン薬および解熱鎮痛薬を投与すること

●投与により副作用が発現した場合は、添付文書の「用法及び用量に関連する注意」の記載を参考に、減速、中断、中止すること

●承認までの治験症例が限られていることから有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例で使用成績調査を実施すること