インフルエンザが早くもピークアウトのもよう
新型コロナウイルス2019-nCoVの話題続きであったため、今日は違う話題でもと思い、2020年第3週(1月13~19日)までの感染症情報をまとめた。
インフルエンザ
2019年第50週(12月9~15日)に注意報レベルとなり、新型インフルエンザが猛威を振るった2009/2010シーズン以来の立ち上がりの早さを示したインフルエンザだが、2020年に入ってから報告数が減少し、今シーズンの流行ピークアウトした感がある。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の第3週の報告数は2.44人で、例年並となっている。定点当たり報告数が多い都道府県は、鳥取県(5.47人)、富山県(5.45人)、福岡県(5.38人)
伝染性紅斑
2019年の後半は例年より高めで推移していた伝染性紅斑。2020年第3週の報告数は0.51人と、昨年同時期(0.88人)よりも減少した。定点当たり報告数が多い都道府県は、熊本県(1.98人)、福井県、鳥取県(ともに1.74人)
感染性胃腸炎
2019年後半は例年より少ない傾向にあった感染性胃腸炎。第3週の報告数も5.99人と、引き続き少なめで推移している。定点当たり報告数が多い都道府県は、宮崎県(12.64人)、大分県(12.5人)、福井県(10.22人)
咽頭結膜熱
咽頭結膜熱の第3週の報告数は0.34人だった。定点当たり報告数が多い都道府県は、鹿児島県(1.2人)、福井県(1.0人)、長崎県(0.82人)
であった。
新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症◎ヒトに感染する7種類目のウイルス
中国・武漢市から広まった新型コロナウイルス(Novel Coronavirus;2019-nCoV)感染症が社会問題化している。コロナウイルスは、プラス鎖の1本鎖RNAウイルスで、電子顕微鏡像が王冠に似ていることから、王冠を意味するギリシャ語「corona」と命名された。ヒトに感染してかぜ症状を生じるウイルス4種類と、動物から感染して重症肺炎を生じるウイルス2種類が知られる。
かぜの10~15%(流行期35%)はコロナウイルスによる。一方、重症な肺炎となるウイルスとしては、コウモリ由来で重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となったSARSコロナウイルス(SARS-CoV)と、ヒトコブラクダ由来で中東呼吸器症候群(MERS)の原因となったMERSコロナウイルス(MERS-CoV)が報告されている。
2002年に中国で発生したSARSは、発熱、悪寒戦慄、筋肉痛など、突然のインフルエンザ様の前駆症状で発症する。感染性のある飛沫への曝露を伴う密接な接触などでヒトからヒトに伝播することが多いと考えられ、これまでの患者報告から致死率はおよそ9.6%と推計されているがあくまで推測である。
一方、2012年にサウジアラビアで発見されたMERSの典型的な症状は、発熱、咳、息切れ、下痢など。患者との濃厚接触がなければ、ヒトからヒトへの感染伝播は限定的と考えられている。MERS流行時の致死率は約35%だったが、その後の調査で、不顕性感染も多いことが分かった。
今回流行している2019-nCoVは、新規のコロナウイルスであるが、宿主動物は不明だ(2020年1月31日現在)。一般にコロナウイルスは、家畜や野生動物など様々な種で感染が確認されているが、種特異性(生物の種の違いが、生物の体を構成する部分の違いや、外界からの物質に対する反応の違いに反映していること)が高いため、種を越えて他の動物に感染することはないのではないかと考えている。