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あしたへ向かって

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悩ましい、COVID-19と鑑別不可能な疾患

今年は、たくさんの「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)疑い」の患者さんが来院し、どのようにして動線を分離するか、誰を対象に検査するかなど、感染対策チーム(ICT)としても色々と悩まされました。

 院内にもある程度基準ができてきて、フローに沿って適切に検査・診断ができるようになったため、現在は混乱がだいぶ収まってきました。

 ただ、全国の呼吸器内科医にとって「コロナに似てる」疾患があります。

それが特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia:COP)です。

特発性器質化肺炎とは何か

 COPとは、その名の通り原因不明で器質化肺炎(OP)を来す疾患です。OPというのは、細気管支から肺胞にかけて、リンパ球などの炎症細胞や気腔内にポリープ状の器質化組織が析出する疾患です。オーガナイズしてしまうわけです。ヒトの体は、体内に入ってきた異物に対して、血栓や肉芽組織を形成して取り囲み、事態の鎮静化に動きます。その反応が肺に表現されるものがCOPと考えられています。とはいえ、外的抗原が病因とは簡単に言い切れない部分もあって、COPは特発性間質性肺炎の1つに分類されています。

 COPの困った点は、画像所見がCOVID-19と酷似しており、胸膜直下にすりガラス陰影から浸潤影が斑状に見られるという点です。COVID-19と比較して、浸潤影の割合がやや多い点は鑑別になるかもしれませんが、画像だけでそれを判別するのはまぁ不可能です。「これは典型的なCOPです」と誰かが言った症例がCOVID-19だったこともあれば、COVID-19だと思われた症例がCOPだったこともあります。

 COPも発熱やCRPの軽度上昇を来しますが、白血球数はほとんど上昇しません。咽頭痛などの上気道症状はかなり少ないと思いますが、COVID-19とて特異的な臨床症状があるわけでもありません。

 このにっくき「コロナもどき」の確定診断は気管支鏡で生検を行う以外にないのですが、COVID-19が鑑別に入っている時点で、簡単に気管支鏡検査をできないのが今の時代。「フルPPEで気管支鏡検査すればいい」とよく言われますが、スタッフの配置も物品準備も色々大変で

 全身性ステロイドをトライアルで投与して反応を見るのも手ですが、COVID-19にもそれなりにステロイドは効果的ですので、治療反応性から判断することも難しい。診断が付かなくても、結果的に治ればいいじゃん、という考え方もアリかもしれません。

 というわけで、「COP vs COVID-19」の議論になったとき、実臨床では複数回のPCR陰性を確認せざるを得ないのが現状です。抗体価を見るのも手かもしれませんが。

COPの予後は良好

 肉芽組織は線維化しませんので、基本的にCOPは間質性肺炎の中で最も予後が良好です。AFOP(Acute Fibrinous and Organizing Pneumonia)というCOPの重症型にならない限り、死亡率もほぼゼロですが、無症状の患者さんもいます。

 

注意点

 ただ、陰影の広がりや症状に応じてプレドニゾロンなどの全身性ステロイドを用いて治療すると、ものの数日で陰影が消退してきます。ただ、全身性ステロイドを減薬していく過程で再発が多い点には注意が必要です。