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アナフィラキシーの機序について

アナフィラキシーの機序
 ワクチン接種による全身症状のうち、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱などは、ワクチン接種後数時間~数日後に現れる一過性の現象で、機序は明らかではないもののワクチンによる正常な免疫応答の一部と考えられる。一方のアナフィラキシーは、アレルゲンなどの侵入によって複数の臓器にアレルギー症状が惹起され、生命に危険を与える可能性のある過敏反応であり、ほとんどが接種後数分~十数分以内に発現する。

 ワクチン接種後のアナフィラキシーは、免疫原であるワクチン主成分やアジュバント、保存剤などの添加物に対するIgE抗体を介して、マスト細胞が活性化することで症状が引き起こされると考えられている。従ってアナフィラキシーへの対策には、ワクチンのどの成分に対してIgE抗体が産生されるかを特定することが肝要になる。

 新型コロナウイルスのワクチンにアジュバントや保存剤は添加されていない。しかし、Pfizer社およびModerna社のmRNAワクチンには、mRNAが封入された脂質ナノ分子を形成する脂質二重膜の水溶性を保持する目的でポリエチレングリコール(PEG)が使用されており、これがアナフィラキシーの原因になり得る。なお、AstraZeneca社製のワクチンには、PEGと交差反応性を持つがPEGよりも分子量の小さいポリソルベート80が添加されている。

 PEGはマクロゴールとも呼ばれ、様々な食品に乳化剤として添加されている。また、化粧品や軟膏基材、慢性便秘治療薬、大腸内視鏡検査前処置用の腸管洗浄剤などに使用されているほか、薬物動態の安定化のために種々の注射薬に添加されている。広範にPEGが使用されていることを考慮すると、一般にPEGを原因としたアナフィラキシーの発生頻度は高いとは言えないものの、これまでに薬物アレルギーや原因不明の特発性アナフィラキシーとされていた患者の中に、PEGに対する過敏反応が含まれている可能性は否定できないとしている。

 また、米国では、Pfizer社ワクチンによるアナフィラキシー例の94%、Moderna社のワクチンによるアナフィラキシーの全例が女性であったとの報告もあることから、化粧品による経皮感作の可能性も否定できないとしている。ただし、PEG特異的IgE抗体の測定系は確立していないことから、アナフィラキシーの誘発機序や実態解明については今後の課題であると指摘している。