にほんブログ村 教育ブログ 生涯学習・教育へ
にほんブログ村 http://pharmacist2.jugem.jp/ https://confessiondemasquepharmacist.wordpress.com/2021/01/10/

あしたへ向かって

トレンド、医療、政治、趣味について書いていきます

注意を要する接種対象者の特徴などについて解説する。

新型コロナウイルスのワクチンの接種が日本より先行している欧米では、重度の過敏症であるアナフィラキシーを来す頻度が従来のワクチンよりも高いことが報告されている。米国では、Pfizer社およびModerna社が開発したmRNAワクチンが承認されている。

1月27日時点での米国疾病予防管理センターのまとめによると、各ワクチンの接種後、それぞれ100万接種当たり4.7例および2.8例の頻度でアナフィラキシーが報告されている。一般的にワクチンによるアナフィラキシーの頻度は100万接種当たり1.3例程度だ。

 しかし、新型コロナウイルスのワクチン接種後のアナフィラキシーであっても、対処法は他の原因によるアナフィラキシーの場合と変わらず、適切な対応により回復する。指針では、ワクチン接種に際してはその益と害のバランスを考える必要があり、副反応に対する過度な懸念や対応は社会に大きな損失と負担をもたらすと指摘している。

 

ワクチン接種に注意を要する対象者
 3月時点で日本で承認されている新型コロナウイルスのワクチンは、Pfizer社が開発した「コミナティ筋注」のみ。このワクチンの接種不適当者として、以下の4例が挙げられている。ただし、(3)以外は一時的な接種延期でよいとしている。
(1)明らかな発熱を呈している者
(2)重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
(3)本剤の成分に対し重度の過敏症の既往歴のある者
(4)上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
 「重度の過敏症」に該当するのは、全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下など、アナフィラキシーを疑わせる複数の症状を呈した場合。1回目のワクチン接種時に、血管迷走神経反射や発熱などの副反応を呈したケースは接種不適当には該当しない。一方、1回目の接種時に重度の過敏症を呈した場合には、2回目のワクチン接種は避けるべきだとしている。

 また、ワクチンの成分(特にPEGや、PEGと交差反応性を有するポリソルベートを含む薬剤)に対する重度の過敏症の既往がある場合は、専門医による適切な評価と、重度の過敏症の発症時における十分な対応が可能な体制下でない限り、ワクチンの接種を避けるべきだとしている。

 コミナティ筋注の接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)としては、以下の6つの例が挙げられている。
(1)抗凝固療法を受けている者、血小板減少症または凝固障害を有する者
(2)過去に免疫不全の診断がなされている者および近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
(3)心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害などの基礎疾患を有する者
(4)予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者および全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
(5)過去に痙攣の既往のある者
(6)本剤の成分に対して、アレルギーを呈する恐れのある者
 (4)のうち全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことがある場合、および(6)に該当する場合は、アナフィラキシーなど重度の過敏症に対応できる体制の下でワクチンを接種し、接種後の観察時間も30分以上とする。

 (6)で言及されているワクチンの成分のうち、アナフィラキシーの原因となる可能性があるのは、PEGおよびそれと交差反応性があるポリソルベート。特定の医薬品使用後にアナフィラキシーの既往がある場合、添付文書でその薬剤にPEGまたはポリソルベートが含まれていたかを、ワクチン接種前に確認する必要がある。指針では、PEGまたはポリソルベートが含まれる医薬品リストが掲載されている論文を参照。

 

なお指針では、ワクチン接種前に予防的にヒスタミンH1受容体拮抗薬を投与することは、かえってアナフィラキシーの初期症状を不明瞭にする危険性があるため、好ましくないと指摘している。ただし、他の疾患に対して投与中のヒスタミンH1受容体拮抗薬については、投与を中止する必要はないとしている。

 さらに、喘息、アレルギー性鼻炎アトピー性皮膚炎、ワクチンや医薬品(注射)以外の物質(食品、ペット、ハチ毒、環境[ハウスダスト、ダニ、カビ、花粉など]、ラテックスなど)に対するアレルギーを有する場合も、新型コロナウイルスのワクチンを接種することによるアナフィラキシーの発症リスクは変わらない。ただし、コントロール不良の喘息患者は、アナフィラキシーを来した場合に重症化するリスクがあるため、これらに対応できる医療機関での接種が望ましいと。