「ワクチンを打ちたくない」人に何を伝えるか
新型コロナウイルスの感染拡大は、海外ではdisasterという言葉を使って報じられています。日本でもワクチン接種が進みつつありますが、打ちたいと思っていても予約をなかなか取れないという人がいる一方で、「ワクチンを打ちたくない」と考える人もいます。ワクチンの打ち手を担う医師はもとより、自身が打ち手ではなくても薬剤師として当たる際には、ワクチン接種のことが話題になることは多いかと思います。
副反応を恐れる人の「不安」を否定しない
まず、「副反応が怖いので打ちたくない」という人は多いでしょう。ただ、副反応が怖いということ自体、合理的ではないとは断定できません。実際、数日にわたって接種部位が痛くなったり、腕が上がらなくなったという人も多いからです。
さらに、高熱が出ることもありますし、重篤な副反応が出る可能性もわずかながらあるのは事実です。「そのような副反応が起きる頻度は低いので恐れる必要はない」といってみても、あまり説得力はありません。
ワクチンを打つか打たないかの最終的な判断は個人に委ねられているので、医師、薬剤師ができることは選択の援助をすることだけです。医師はワクチン接種のメリットとデメリットについて丁寧に説明することしかできません。
大切なのは、不安を否定しないことです。接種後に死亡した人がいるという報道に接すると、たとえそのようなケースが統計的にはごくまれであっても、自分が同じ目に遭うのではないかと考えるのは、これからワクチンを接種する人にとっては理由もない不安ではありません。
このような点に注意をした上であれば、医療従事者として、専門家として自らの見解をはっきり述べてもいいと私は考えています。
私の祖母は既に二度の接種を受けましたが、以前、接種することの是非を循環器内科の主治医にたずねたときいています。後に接種時に記入する問診票にはワルファリンを服用しているかという問いがあり、さらに主治医の許可を得ているかという項目があったので(この質問項目はすべての自治体の問診票にはないかもしれません)、結果的にたずねておく必要があったのは後から知ったのですが、当時はまだ接種がいつになるかもわかっていない時でした。
その時なぜ、接種の是非について主治医にたずねたのかといえば、ワクチン接種に懐疑的あるいは批判的な人意見が目に留まったり、真っ当な書き込みにも接種時に強い副反応が出たと書いてあるのを読んだりしたことがあったため、本当に大丈夫なのかという不安だったときいています。
教科書をどれにするかについては、専門家である教師が責任を持たないといけません。私は教える時点で手に入る教科書の中で、最善のものを選んでいましたので、たとえ学生が薄い教科書がいいといったとしても、教科書の選択については譲ることはありませんでした。
そもそも、ワクチンを打ちたくないという人でも、感染することを恐れているはずです。自分は感染するはずはないと思い込んでいる人もいるでしょうが、その根拠のない楽観主義も、不安を隠しているだけかもしれません。自分で打たないと決めた人は医師に何もいってこないでしょうから、「打ちたくない」と医師にいう人であれば、まだ打とうか打つまいか心は揺れているはずです。そうであれば、なおさら医師や医療従事者は正しい情報提供をする必要があると感じています。