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あしたへ向かって

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天気痛の考え方と漢方処方処方

今週のお題「爆発」 

 

天気痛は、気象や天気の影響を受けることにより、頭痛、めまい、肩凝りなどが悪化する病気です。天気が崩れる前の日や、梅雨の時期、台風の接近につれ、体調不良が生じます。女性に多いのが特徴です。気象病とも呼ばれています。

↑腰や膝を始めとする身体機能の衰えやだるさ、めまいや健忘症、不眠などの悩みを改善する、伝統的な処方に基づいて作られた漢方薬です。27種類の様々な有用成分を配合。腎陽を温めて血液に栄養を与え、陰(熱を冷ます働き)の気に活力を与えて、脊髄を健康に導きます。

 

 よく見られる症状は、頭痛、肩凝り、関節痛、神経痛、腰痛、めまい、眠気、気分の落ち込み、不安感などです。変形性関節症や、関節リウマチ、線維筋痛症などの疾患が悪化する場合もあります。

 原因は、主に気圧の変化を受けて生じる自律神経の乱れだと言われています。耳の奥の内耳には、気圧の変化を捉える機能がありますが、そのセンサーが気圧の変化に過敏に反応し、自律神経のバランスが乱れることで、不快な諸症状が引き起こされます。

 また、気圧が変動すると、交感神経が興奮し、血管が収縮します。その結果、血行が悪化し、体内の酸素や栄養素が不足し、痛みを引き起こす物質が出ることとも関係しているようです。また、内耳の循環が悪化してリンパ液がたまってむくむことでも、気圧の変化に敏感に反応し、頭痛が生じやすくなるとも言われています。

 この病気が女性に多いのは、月経周期や更年期に生じるホルモンバランスの変化や乱れが、自律神経の働きを過敏にし、その影響で天気痛が起きているためと考えられます。

 西洋医学では、痛みに対して対症療法で治療に当たります。天気予報を見て、事前に鎮痛薬を用います。抗めまい薬や、酔い止め薬が有効な場合もあります。

 漢方では、「天気に左右されない体質」を作っていくことにより、天気痛の根本的な治療を進めます。気圧などの天候の影響を受けやすいのは、体内を流れる血(けつ)や津液(しんえき)です。血は人体の構成成分の1つで、血液、血液循環、血液が担う滋養作用という意味があります。津液も人体の構成成分の1つで、体内の水液を指します。

 中医学に「不通則痛(ふつうそくつう)」という原則があります。「通じざれば、すなわち痛む」と読みます。体内での気・血・津液の流れがスムーズでないと痛みが生じる、という意味です。これら血や津液の流れが滞ることにより、痛みなどの症状が生じるのが天気痛です。

 従って漢方では、血や津液の流れをスムーズにすることにより、天気痛の治療をします。津液と血は、リンパ液や血流の停滞に近い概念ですが、体質的に根本から治療しようというのが漢方の特徴です。

 むくみやめまいが顕著なら、「水湿(すいしつ)」証です。水湿とは、水分の吸収や排泄、代謝が滞り、過剰な水分が体内に滞っている状態です。水湿によりリンパ液が内耳に停滞すると、天気痛が生じます。水滞、水邪、水毒などとも呼ばれる証です。水湿を取り除く漢方薬で治療を進めます。

 血流の悪化により疼痛が生じている場合は、「血瘀(けつお)」証です。血瘀は、血の流れが鬱滞しやすい体質です。血管の微小循環障害や、流動性の異常、精神的ストレス、寒冷などの生活環境、寒冷刺激、不適切な食生活、運動不足などにより、この証になります。血の流れを促進する漢方薬で血瘀を除去し、天気痛を治療します。

 ストレスが高じて自律神経の働きを狂わせ、天気痛が起こる場合もあります。「肝陽上亢(かんようじょうこう)」証です。「肝」は五臓の1つで、からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる働き(疏泄:そせつ)を持ちます。自律神経系と関係が深い臓腑です。この肝の機能(肝陽)が上昇すると、この証になります。肝陽と共に痰飲が上昇し、内耳にて停滞すると、天気痛が生じます。肝陽を鎮める漢方薬で治療を進めます。

 月経周期や更年期に生じるホルモンバランスの変化や乱れが自律神経の働きを過敏にし、その影響で天気痛が起きているようなら、「陰虚(じんいんきょ)」証です。「腎」は五臓の1つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどる臓腑です。「陰」は陰液のことで、人体の構成成分のうち、血・津液・精を指します。この腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。この証の場合は、腎陰を補う漢方薬で天気痛を治します。

 日常生活では、耳周りのマッサージや、耳周りを温めることが効果的なようです。内耳辺りの血行を一時的によくすることで、天気痛をある程度予防できます。運動で汗をかき、体内の余分な水分を減らすのも一案です。自律神経を乱さぬよう、規則正しい生活や、十分な睡眠、早寝早起き、食生活の改善、ウォーキングなどの適度な運動、ストレスを溜め込まない工夫なども心掛けましょう。

■症例1

「雨が降る前に、頭が痛くなります。同時に眠気が強くなり、めまいがすることもあります」

 

疲れやすく、あまり元気のないほうです。天気痛のときは、食欲も減退します。舌は白く、表面に白い舌苔がべっとりと付着しています。

 この人の証は、「水湿(すいしつ)」です。過剰な水分が体内に滞っている状態です。水湿によりリンパ液が内耳に停滞すると、天気痛が生じます。めまい、白い舌、べっとりとした白い舌苔などは、この証の特徴です。

 この証の場合は、水湿を取り除く漢方薬を用い、治療を進めます。この患者さんには、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)を服用してもらいました。服用を始めて1カ月後、痛みが軽くなってきました。2カ月後、めまいは完全になくなりました。4カ月後、天気痛が起こることはほとんどなくなりました。体調がいいので漢方を飲み続けているうちに疲れにくくなり、すっかり元気になりました。

 眠気、疲れやすい、元気がない、食欲不振など、脾気虚(ひききょ)の症状がなければ、五苓散(ごれいさん)などを用いるのが主です。

 

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