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あしたへ向かって

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新型コロナ、「5類格下げ」に反対する理由について2

5類になったら入院依頼はかかりつけ医の仕事?
 さて、本題の「COVID-19の5類への格下げに反対する理由」をまとめたため、述べたい。「5類」となれば保健所が関与しなくなるわけで、入院が必要な事例はかかりつけ医が自分で入院先を探すことになる。もしも、このHIV陽性の男性の入院先を当院が探すことになったとして、エイズ拠点病院が満床だった場合、はたして受け入れてくれる病院があっただろうか。今回入院させてもらえたその病院に対して、保健所でなく当院が交渉しても受け入れてくれただろうか。

 「5類」になればかかりつけ医が入院先を探すことになる。このとき「声の大きい(強い口調の)医師」や「その病院のOB・OGの医師」が交渉すると入院しやすい、ということが起こらないだろうか。少ない病床を大勢の患者が取り合うような状態で、各かかりつけ医が複数の病院に無秩序に交渉して「公正さ」が保てるはずがない、と思う。

 では、どうすればいいか。各かかりつけ医からの要求をとりまとめて客観的な評価を加え入院の優先順位を決めていく、いわば「司令塔」のような存在が必要になる。そして、その司令塔は保健所を置いて他にはない。これが、僕が5類への格下げに反対する最大の理由だ。とのことだった。

 COVID-19流行以降、何度も保健所ともめている。電話口で思わず強い口調になってしまったのをきいたこともあるし、……。もめた理由はいつも同じで「あきらかにPCR検査が必要な事例なのに何で受けてくれないの?」というものだ。保健所にお願いしてできないのなら当院でやるしかない、と考えて院内のPCR検査を開始した。現在はPCRを実施する医療機関は十分に増えたために検査ができないということはほぼなくなった。

 よって、当院にとって現在の保健所は、入院の適応を公正に判断してもらえる非常にありがたい存在である。根本的なことを言えば、人口当たりの病床数が世界最多と言われている日本でなぜCOVID-19で入院できないのだ、という問題があるわけだが、これは保健所の責任ではないだろうと考えている。

 他にも2つほど「5類」に格下げされると生じる問題がある。

 1つは「発熱外来の維持」だ。現在は「コロナは感染症法上、特別な病気に分類されていて、そのコロナかもしれないから特別な枠に来てもらわねばなりません」と言えるが、「格下げ」されれば通常の診察時間に来ようとする患者が増えるのは避けられないだろう。もう1つは「費用」だ。5類に格下げされPCR検査を3割負担で受けるとなると5000円以上もかかることになり、この費用を出せない患者が(少なくとも当院の患者では)続出するのは間違いない。

 ただし、「コロナにかかわらず感冒症状で受診するときは発熱外来に行かなければならない」を全ての医療機関でのルールであることを周知させ、費用については「コロナの検査はいつも無料」とできるなら、これら2つの理由は5類への格下げの壁にはならないかもしれない。だが、病床数が圧倒的に少ない現実の中、保健所に代わる入院調整の「司令塔」をどうするかの議論なくして、5類への格下げは現実的ではないと考えた。